タワマンに住む専業主婦の願い!ついに動き始める計画・・・
人の役に立ちたい。
社会との繋がりを少しでも感じていたい。
しかし、会社を辞めて数年、ブランクもあり中年であるといったら、なかなか雇ってもらえないのではないだろうか。
就職活動をしなければならないとなれば、気が重くなってしまう。
なにより、まだ、外の世界でいろいろな人と会うのはしんどい。
そんな今の自分にできることといえば、と考えたとき、長年趣味で学んでいた占いが浮かんだ。
ありがたいことにお金には困っていないので、無償でしたい。
完全に自己満足と博愛の精神だ。
幸い夫の了解も得られたので、心置きなく始められる。
―さて。どうしようか。
そうなると困るのが、誰をどこで占うかだった。
京子が占いを嗜んでいるということは、幸雄以外には誰にも言っていない。
まずは占いをする場所が必要だった。
京子の住むタワーマンションでは、住民交流イベントが開かれる。
管理会社が主体となって季節ごとに開かれるイベントは、例えば七夕やお月見など様々だ。
普段話せないタワーマンションに住む人々と関われるということで、子供から高齢者まで人気の企画のようだった。
京子は、このタワーマンションに引っ越してきて1年、これらのイベントに参加したことはなかった。
住民交流イベントについて思い出したのは、お昼時だった。
デパ地下で買ったおこわ米八の弁当を食べ終わり、食器を洗いながら占いをどうするか考えていたときだった。
―そういえば、イベントのお知らせがきていた気がする。
水で濡れた手をタオルで拭きながら、50帖ほどのリビングを見わたす。
―どこにやったかしら。
ポストに入っていたクリスマスイベントのお知らせが、リビングテーブルに置いてあるのに気がつく。
―あった、あった。
A4のコート紙は、触ると厚手でしっかりしている。
〝クリスマスパーティー開催″と書かれた表題は、赤色の文字に白で縁どられていた。
―これだわ!
タワーマンションの住民ならば、素性が知れている分、いくらかこちらも気を許しやすいかも知れない。
長い付き合いになるかもしれない住人であるし、以前からどういう人が住んでいるのか、少し気になってはいた。
それに、これはチャンスではないだろうか。
京子に身近な話友達ができる、という点からみて。
一方、
―同じマンションの人には、悩みは話しにくいかな…。
という心配も京子の胸にはあった。