「遅かったわね」
声を掛けてきたのは同じ年頃の女性。
シフォンのドレスが風に揺れている。
「道が混んじゃって」
美佐恵は持っていたバッグをウェイターに手渡す。
差し出されたシャンパングラスを手に取った。
「そちらが?」
沙耶香に目をやりながら美佐恵に尋ねている。
「そう。同僚の沙耶香さん」
その場にいた数名の男女が沙耶香の方を見る。
視線が軽く上下して値踏みされたことが分かる。
皆、オーダー品らしきものを着こなしている。
ブティックで既製品を購入することなどないのだろう。
明らかにステージが違う。
そしてこういう層の人間がどんな本性を隠しているのか沙耶香は熟知していた。
(居心地の悪い時間になりそう・・)
より一層、暗い気持ちになりながら沙耶香は差し出されたグラスを手に取った。
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同僚の美佐恵に誘われ、あるパーティーに参加した沙耶香は美佐恵とその取りまきの悪意に満ちた態度に嫌気がさしていた。