NOVEL

noblesse oblige vol.6~偶然と必然~

(どうしているかしら)

ふとした瞬間に思い出される。

ゴンドラに相乗りしただけの縁なのに。

切れることなく続いている、そんな気がした。

 

  • シーン3 瑞穂の場合

 

ひどい事故。

けれど瑞穂には分っていた結末だった。

不意に浮かぶイメージはいつものこと。

伝えたところで回避できるとは限らない。

 

ゴンドラを降りたとき、静音の瞳に翳りが見えた。

そして雪に舞い散るバラの花びら。

 

止められなかった自分を責めることはない。

伝えるとも限らない。

 

ただ、あの時は口にした。

聞いてはもらえなかったけれど。

 

(厄介な力)

避ける力はない。決めるのはいつも自分以外の人間。

他人を動かすのは難しい。

ならいっそ見えなければいいのに。

 

大きな事故だったけれどニュースになることはなかった。

白壁の千賀家なら当然だろう。

あの時は知らなかったけれど同じエリアだけに話は伝わってくる。

あれから2年。静音の姿を見た者はいない。

どうやらまだ回復してはいないらしい。

 

「・・お節介は焼くものじゃないわね」

気になることはあったけれど、瑞穂はいつものように心にしまい込んだ。

 

だからだろうか。

2年経った今でもふと、思い出す。

一緒に居た沙耶香のことも。

(縁があったら、また会えるでしょう)

空を見上げて、そう思った。