NOVEL

noblesse oblige vol.10~巡り合う縁~

「お出でなさいませ」

玄関で執事の安岡が頭を下げて二人を迎えた。

 


前回:noblesse oblige vol.9~動き出した運命の輪~

はじめから読む:noblesse oblige vol.1~いつもの夕暮れに~

 

「お久しぶり」

瑞穂が挨拶をする。

「お邪魔いたします」

沙耶香も頭を下げた。

「お待ちです」

安岡が先に立って奥の部屋へと二人を促した。

扉を開けると中庭だろうか、外に通じる窓を背に女性が座っている。

艶やかな瞳と黒髪。

(この方・・)

沙耶香が気付いたのを当然と受け止めて瑞穂が歩み寄る。

 

「静音さん、ご機嫌いかが?」

「お久しぶりね。瑞穂さん」

静音と呼ばれた女性が顔をあげてこちらを見た。

 

「沙耶香さん、かしら?」

「はい。宮田沙耶香です」

進み寄って静音の方へ右手を差し出した。

その手を軽く握って静音が二人に座るよう、促した。

 

2年前の冬。

北海道ですれ違った3人が今、同じ場所に居る。

沙耶香はどこかでカチリと鍵が開いた気がして居住まいを正した。

 

「お礼を言いたいと、ずっと思っていたの。来て下さって嬉しいわ」

静音が心からそう告げる。