NOVEL

noblesse oblige vol.10~巡り合う縁~

ノブレス・オブリージュ。「高貴さゆえの義務」

欧米では一般的なこの倫理的義務は日本ではまだまだ浸透しきらない。

「個」の文化が強すぎるせいかもしれない。

けれど人間としての普遍的義務であるとことは間違いない。

瑞穂や真司のような層の人間であれば尚のこと。

そこへ加わる者はそのことを知っていなければならない。

教えられて学ぶのではなく心で感じられる資質こそ必要。

そうでなければ互いに要らぬ苦労が待ち受けるだろうことを二人は知っていた。

 

  • それぞれの春

 

次の春。教会の鐘が響く。

沙耶香と真司の結婚式。

 

瑞穂と会ってからの真司の行動は素早かった。

沙耶香に声をかけ、親交を深めるまでさほどかからなかった。

仕事の接点しかなかった二人だが意外なほど意気投合した。

お互いを尊重し、人生の目指す方向が同じことが決め手となった。

瑞穂の助言もあり野中の家の者も反対することはなかった。

沙耶香の方は家の格が違うと苦労するのではと危惧したが、野中が請け負った。

 

「おめでとう、沙耶香。とても綺麗よ」

瑞穂がブーケを手渡しながら声を掛ける。

「ありがとう。瑞穂のおかげよ」

「ね、言ったでしょう?私たちはずっと一緒」

 

「私も混ぜてね」

静音が松葉杖をつきながら、けれど自分の足で入ってきた。

二人と会ってから静音は積極的にリハビリを再開した。

医師であり療法士でもある新城が寄り添い、目を見張る回復をみせていた。

 

瑞穂は透と相変わらずの距離で付き合っている。

恐らく近い未来、共にいるだろう。

 

静音の傍にも、支える新城が居る。

 

「1番に式を挙げさせてもらうわね」

沙耶香が微笑みながら二人に言う。

 

「結婚はしたいと思っている人からするものだから」

瑞穂は綺麗なウィンクで答えた。

「じゃあ、私は最後ね」

静音の言葉に二人が顔を見合わせて笑った。

 

The End

 

はじめから読む:noblesse oblige vol.1~いつもの夕暮れに~