NOVEL

家にも外にも居場所がない vol.5 ~再チャレンジ~

 

「どんな人なの?」

「若い頃から努力家で、一からいまの会社を興したエリートらしいわよ」

 

なんでもその方は知人に紹介された起業家で、市内の有名大学を出ており、学生時代に会社を立ち上げるほど優秀な方だそうです。

 

「凄い積極的な人なんだね」

「自分で何もできないあなたに丁度いいわ」

 

正直独り身の方が気が楽ですし、誰かとお付き合いしても上手くいく自信はないのですが、そう言った所でどうせ母は聞き入れてくれません。

失恋の傷も塞がらないまま次のお相手と会う事に抵抗はありますが、行けと言われたのなら行くしかありません。それに良い相手が見つかれば母から離れることができるかもしれません。

そんな淡い希望を持って今回もお見合いに望むことにしました。

 

前回のような初対面で全く話す合間もなくお見合いが終わるのは嫌だったので、予め母には料理は少なめの場所で、相手に対して品定めするようなことはやめてほしいとお願いしました。母は少し不満そうでしたが、

 

「まぁまた破談になっても困るしねえ」

 

と愚痴を言いながら私の意見を受け入れてくれました。

週末に私と母は名古屋マリオットアソシアホテルへ向かいました。15階にあるお洒落なラウンジに通されると、席には初老の男女と若い男性が座っていました。

母が言うにはお見合い相手とそのお母さま、今回のお相手を紹介してくださった知人の田中さんだそうです。

 

「初めまして! 本日はよろしくお願いします」

 

今回のお相手は琢磨さんと言い、年齢は29歳で短髪の精悍(せいかん)な顔立ちで、体格は痩せ型のすらっとした人でした。やる気に満ちた、積極的な方のように感じました。

知人の方や相手方のお母さまへのご挨拶を済ませ、琢磨さんとゆっくりお話をすることになりました。

 

母たちは親同士で、子供は子供同士で。前回のような質問攻めや会話に割り込まれるのは嫌だったので事前に釘を刺しておきました。ですが

 

「琢磨さんはどんなお仕事を? 休日はどう過ごしているのかしら? 清美の第一印象はどうかしら? ご自身の長所ってどんなところがあります?」

 

案の定、私の意見は聞いていませんでした。