NOVEL

家にも外にも居場所がない vol.5 ~再チャレンジ~

 

私が辟易(へきえき)していると田中さんが気を利かせて下さったのか、母の相手をしてくださいました。その間に改めて琢磨さんに挨拶を行いました。

運ばれてきた豪華なティースタンドを挟んでお茶を楽しみ、琢磨さんと仕事の話や趣味の話などで会話を広げていきました。

 

IT系のお仕事をしていらっしゃるんですか?」

「ええ。最近はスマートフォンのアプリケーションの開発を請け負ってるんです」

 

前回は何を話したらいいのか全くわからず上手く会話が続きませんでしたが、以前のお付き合いのおかげである程度なら話せるようになっていました。

琢磨さんは快活に話してくださるので、多少会話が途切れそうになってもすぐに新しい話題を切り出してくれました。おかげで会話が途切れることはなく、話を聞くだけでも充分楽しめました。

にこにこした人懐っこい笑みが印象的で、営業で鍛えたのかトーク力がとても高く、途中途中で母たちにも話題を振って会話の流れを作っていきました。

 

 

「学生時代は登山とかもしていたんですよ! 友人と富士山に登ったら吹雪に襲われてもう大慌てで! 危うく遭難する所でしたよ」

 

自分に自信を持っていて、今までに手掛けた仕事の話や学生時代の体験など積極的に話してくれました。自分のことをたくさん話してくださるので人となりが分かり易くて、今後の生活などがイメージし易かったです。

 

きっと私のことを引っ張っていってくれる。そんな未来が想像できました。

あまり私のことは話せませんでしたが、今回のお見合いは概ね良い形で終わったと思います。帰り際に琢磨さんから次のお誘いを受け、私は快くお引き受けしました。

 

 

今度は失敗せず良い関係を築いていける。この時の私は琢磨さんとのお付き合いに希望を抱いていたのです。

それがまさかあんな事になるとは夢にも思っていませんでした。

 

 

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