「小枝子だって…。」
莉子は、そう答えながら本心であることを伝えるように、小枝子の瞳をまじまじと見つめた。
ファッションと同じで、何もかもが派手な小枝子の顔のパーツ。日本人というよりは、東南アジア系の血がどこかに入っているように思える。
だから年齢が止まって見えるのか?そうでもない。
小枝子は莉子ほどではないが、美容に気を使っているのだろう。肌に張りがある。
普通の女子なら謙虚さアピールのためか、
「そんなことないよ」と、とってつけた答えをするだろうが、小枝子はそうは答えない。
「マジで?莉子に言われると嬉しいなぁ。それなりには頑張ってるけど、そろそろねぇ。手間がかかる年代になってきたよ。」
そう言って、大きな二重の幅を広げる。
小枝子は相変わらず、表情が豊かだ。
そんなことを考えていると、キッチンの方から彼の声が聞こえる。
小枝子の前では莉子の誤魔化しがきかないため、莉子は彼に視線を送れないでいたので、ここぞとばかりに彼の方に視線を投げかけた。
「小枝子、できたから運んでくれる?・・・莉子さん。すみませんね・・・ゆっくり挨拶できなくて。今行くので。」
やっぱり、綺麗な口の動きだ。遠目でもよくわかる。
そして、こちら側を振り返り、手にはトングを握っていた。左手に光る小枝子とお揃いのリング。
新婚だからなのか、しっかりと結婚指輪をはめていた。
そして、彼は左利きなのか。色んなデータを莉子は細かく集めていく。
小枝子が「ちょっと待ってて」と莉子に伝えてから、キッチンに向かった。
二人が肩を寄せ合う姿を眺めていた。やはり、アンバランスな二人だ。ファッションも動作も、身長差も。
小枝子は女子にしては身長が高く、172センチある。彼も決して低いわけではないだろうが、180センチはないのだろう。
だから余計、二人で話している口の動きを見比べる事が出来た。
横に開く癖のある小枝子と、口を縦に開いて話す昭人。