NOVEL

悪女 ~ Movement of the mouth ~ vol.5

 

「小枝子だって…。」

 

莉子は、そう答えながら本心であることを伝えるように、小枝子の瞳をまじまじと見つめた。

ファッションと同じで、何もかもが派手な小枝子の顔のパーツ。日本人というよりは、東南アジア系の血がどこかに入っているように思える。

 

だから年齢が止まって見えるのか?そうでもない。

小枝子は莉子ほどではないが、美容に気を使っているのだろう。肌に張りがある。

 

普通の女子なら謙虚さアピールのためか、

「そんなことないよ」と、とってつけた答えをするだろうが、小枝子はそうは答えない。

 

「マジで?莉子に言われると嬉しいなぁ。それなりには頑張ってるけど、そろそろねぇ。手間がかかる年代になってきたよ。」

 

そう言って、大きな二重の幅を広げる。

小枝子は相変わらず、表情が豊かだ。

 

そんなことを考えていると、キッチンの方から彼の声が聞こえる。

小枝子の前では莉子の誤魔化しがきかないため、莉子は彼に視線を送れないでいたので、ここぞとばかりに彼の方に視線を投げかけた。

 

「小枝子、できたから運んでくれる?・・・莉子さん。すみませんね・・・ゆっくり挨拶できなくて。今行くので。」

 

やっぱり、綺麗な口の動きだ。遠目でもよくわかる。

そして、こちら側を振り返り、手にはトングを握っていた。左手に光る小枝子とお揃いのリング。

 

新婚だからなのか、しっかりと結婚指輪をはめていた。

そして、彼は左利きなのか。色んなデータを莉子は細かく集めていく。

 

小枝子が「ちょっと待ってて」と莉子に伝えてから、キッチンに向かった。

 

二人が肩を寄せ合う姿を眺めていた。やはり、アンバランスな二人だ。ファッションも動作も、身長差も。

小枝子は女子にしては身長が高く、172センチある。彼も決して低いわけではないだろうが、180センチはないのだろう。

 

だから余計、二人で話している口の動きを見比べる事が出来た。

横に開く癖のある小枝子と、口を縦に開いて話す昭人。