唯一の友人の入籍。
莉子の中に芽生えた初めての嫉妬という感情。
真相悪女のファーストステージ開幕のエンジン音が鳴り響く
前回:悪女 ~ Movement of the mouth ~ vol.2
深夜に送った莉子への返信は朝の6時に来た。
今、小枝子がどんな生活習慣をしているのか、気になるところだった。
朝早く起きて、仕事に出かける準備をしてスマートフォンを確認したのだろうか?
返信内容も簡潔で、時間がない中とりあえず書いたような文面だった。
『勿論!日程調節する。』
絵文字はないが、その後に「よろしく」とおじぎしている可愛いキャラクタースタンプがついてきたので、今時間がないのだろう事は十分に察する事ができる。
若かった頃の小枝子は、深夜まで遊んでいる事も多かったし、デザイナーはルーズな出勤体系だからと言っては、生活習慣も乱れているように感じた。
それが、随分と変容している。
男の影響なのか、それとも年齢と共に自覚が出来たのか。
今まではそこまで深い事に興味を持たなかったが、今は気になって仕方がない。
小枝子にLINEを送った後、莉子は小枝子が既読をつけるまで、ネイルをいつも以上に時間をかけて、滅多にやらない莉子が苦手としていた3Dネイルを施していた。
小枝子は既読をつけてからすぐに返事を返してきた。
丁度その時、ネイルも仕上がった。
「綺麗にできた」
莉子は自分のネイルを見ながら、心を落ち着けるように目を閉じる。
年齢を重ねての徹夜は、美容に悪い。
それでも、小枝子の返信を見るまでは寝付ける気がしなかった。
「大丈夫。私は、大丈夫・・・」
莉子は自分の中に芽生えている何かと葛藤するように、言い聞かせながらセミダブルのベッドに身体を沈めた。
誰にも汚されていない、莉子だけの領域。
それが、一人にしては大きすぎるこのベッドだった。
いつか、ここに誰かを招く時が来るとしたら?
そんな気持ちが過らなくもない。
しかし、現実味は沸いてこない。
小枝子からの返信を待つ間に施した、ネイルを包み込むように手を握って、莉子は眠りに落ちていった。