NOVEL

マザーズカースト vol.9~ぞんざいな仕打ち~

発表会の翌日の夕方、家族3人そろってリビングでくつろいでいるとインターホンが鳴った。

カメラを見ると、畏まった様子の千奈美さん夫婦が立っていた。

 


前回:マザーズカーストvol.8~思いがけない偶然~

はじめから読む:マザーズカースト vol.1~新たな土地へ~

 

-涙の謝罪-

 

扉を開けると

「今日はお二人にお詫びに来ました」

と言って早速頭を下げた。

そんな2人を雄一郎はリビングに招き入れた。

 

お茶を入れて4人が席に着くと、千奈美さんの夫・康二さんが語り出した。

「昨日の謝恩パーティーで斉藤さんから妻がこれまでにしてしまった事を一通りうかがいました。あまりに酷く信じられないような内容だったので昨晩夫婦でじっくり話したところ、妻を中心にママ友達でつるんで女子校のような妬み合いが繰り返されていたのを知りました」

「佳奈のオーディションに躍起になりすぎて嫌味を言ってしまったり、終いにはママ友同士でグルになって衣装の買い出しでは仲間はずれにしてしまい、健太くんまで傷つけてしまうような大人として最低なことをしてしまいました」

「お世話になってる直人先生と結衣さんがお話しされているところをたまたま見かけた時も、佳奈がセンターになれなかったことでつい攻撃してやろうっていう気になって、ありもしない嘘のようなメッセージを送ってしまいました。ご夫婦の関係にまでご迷惑おかけするようなことをしてしまい本当に申し訳ありませんでした」

「学生時代にいじめられたことがあってからそれがトラウマになっていて。

母親になってからは他のママにマウントを取られないようにとマンションも高層階に無理して住んで持ち物やメイクも背伸びをして…。

周りを蹴落とすことに躍起になって無駄に虚勢を張ってしまって・・・」

そう話しながら千奈美さんはポロポロ涙を流した。

 

 

今までのことを振り返ると、千奈美さんを含めたママ友達から受けた仕打ちに腹が立って仕方なかった。

でも一方で、自分がママ友達との関係を崩してしまう事によって我が子がいじめられたり不利な立場にならないか不安に思う気持ちも同じ母親としてとても理解できた。

 

実際に自分自身も、恵美梨さんがベビーシャワーをきっかけにママ友達から仲間外れにされたとき、おかしいとはっきり言って庇う事もできたはずだ。

しかし自分や健太の今後のことを考えると自分たちの保身を優先してしまって、結局恵美梨さんを庇うことなく他のママ友達につられてしまった。

自分の手を汚していないと言えども、相手を傷つけてしまったという点では、今の千奈美さんと私は変わりなかった。