NOVEL

マザーズカースト vol.8~思いがけない偶然~

次の日、幼稚園バスの送り出しではママ達に挨拶をしてみるが、みんな子供の前で無視はしないものの明らかに私たち親子を避けるような振る舞いだった。

 


前回:マザーズカースト vol.7~恐れていたこと~

はじめから読む:マザーズカースト vol.1~新たな土地へ~

 

-直人先生-

 

健太は他の子供達と仲良くバスに乗って行ったためとりあえずは一安心だが、健太がいじめにあったり仲間外れにされるのも時間の問題かもしれない。

自分がママ達からの標的になってしまったせいで、健太が悲しい思いをするのは我慢できない。そんな不安に駆られた。

 

そんな中、直人先生からメールが届いた。

「先日のレッスンで衣装のトラブルがあったようでしたので、健太くんが心配でご連絡いたしました。ご都合よろしければ本日、お話のお時間いただけますでしょうか?」

私はすがる思いで直人先生へ相談することにした。

 

日中は他のレッスンでスタジオを使用しているため、駅前の喫茶店で待ち合わせとなった。

 

 

トラブルの経緯を説明すると、直人先生はため息をつきながら話し出した。

 

「以前の発表会のオーディションでも、親御さん同士で嫉妬が生まれてしまう事がありまして。その度に僕の方から説得させていただいてなんとか発表会では子供達が伸び伸び踊れるよう調整を行うんです。衣装の件に関しては僕の方から健太くんも同じ衣装でステージに上がれるよう他のママさんにお願いしてみます」

「オーディションで健太くんを選んだ時、少し嫌な予感はしていたのですが不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。けれど健太くんはこの短期間でものすごく積極性を持てるようになって、センターに選ばれた事でさらに自信にも繋がったと思います。どうかお母様も引き続きサポートをお願いいたします」

 

直人先生の計らいで発表会前の最終レッスンには健太もみんなと同じ衣装が用意されていた。

 

とりあえず発表会は一安心。

そう思っていた矢先、発表会前日の夜、ママ友のグループメッセージに千奈美さんから

1件の画像とメッセージが送られてきた。

 

「直人先生とはどのようなご関係?」

ハートが添えられた文章と共に喫茶店で話し込む私と直人先生の写真が載せられていた。

浮気を匂わすような文章に、さすがの私は耐えられず自宅のリビングで涙した。

急に泣き出した私に、ソファでくつろいでいた雄一郎が声を掛けてきた。