NOVEL

マザーズカースト vol.7~恐れていたこと~

スタジオに着くと、子供達は早速レッスンに向けて着替えを始める。

しかし着替えを済ませると・・・

健太以外のみんなは発表会本番の衣装に着替えていて健太だけがいつものレッスン用ジャージだったのだ。

子供達がハロウィンらしいキラキラした衣装で喜んで見せ合いっこをしている中、健太だけポツンと寂しそうにする姿に私はいてもたってもいられず車を走らせ急遽衣装らしい服を買いに向かった。

 

(他の子達とおそろいのものは見つけられなくても、もっとキラキラな衣装を着せてあげよう)

そんな気持ちでなんとか私は黒のスパンコールの沢山ついた他の子達以上に素敵な衣装を手にすることができた。

スタジオに急いで戻るとレッスンは中盤に差し掛かっていた。

 

健太を着替えさせて

「お母さんが衣装忘れちゃったからだね。ごめんね、健太」

となんとかなだめることで、健太は塞ぎ込むことなくみんなの輪に入って踊りきった。

 

そんなバタバタする私に対してママさん達は何もなかったかのように我が子にカメラを向けているのだった。

 

 

そんな態度に痺れを切らした私は

「衣装の買い出しの連絡が来ていなかったのですが、私だけ仲間外れにするなんてあまりにも酷いんじゃないですか?」

小百合さんやママ友達に向けて言った。

すると小百合さんは

「子育てはみんなで協力するのが普通なのに、自分だけ優秀な講師を雇って子供をセンターにしようだなんて酷いのはどっちかしら」

そう強気な返事をしてきた。

「うちの健太は個別レッスンなんて頼まず、自分の努力でセンターになったんです!」

思わず私も強く返してしまったがこれが大きな過ちとなった。

 

個別レッスンへ常に通わせて発表会ではセンター常連の佳奈ちゃんのママである千奈美さんの癇に障ってしまった。

「せっかくセンターなんだもの。1人だけ違う衣装で本番もステージに立てばいいんじゃないかしら?」

顔を赤くして怒った千奈美さんはそう吐き捨てるように言い席を離れていった。

 

レッスンがちょうど終わり、健太は衣装に満足した表情で戻ってきたが私は悔し涙を抑えながら家路についた。

 

ついに私が標的になる日が来てしまった。

 

 

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息子・健太がセンターに選ばれたことによりいじめの標的となってしまった結衣。そんな中、ダンス講師の直人先生から衣装トラブルの件で話がしたいとメールが届く。