NOVEL

マザーズカースト vol.4~虚飾にみちた関係~

ベビーシャワー当日。

朝のゴミ出しでコモンホールを通るとまだ8時前だというのに、恵美梨さんがすでに飾り付けの用意などパーティーの準備を始めていた。

 


前回:マザーズカースト vol.3~プレッシャー~

はじめから読む:マザーズカースト vol.1~新たな土地へ~

 

 

-慌ただしい朝-

 

「恵美梨さんおはよう。今支度してすぐに手伝いに来るわね!」

そう声を掛けると

「ほんとにありがとうございます。毎回幹事は一人でバタバタだからお手伝いしてもらえるのすごく助かります」

と恵美梨さんは安心した表情を見せた。

 

恵美梨さんはママ友グループの中でも年齢が27歳と一番若く、育ちの良さがとても感じられるもののまだまだ若者らしいあどけなさの残るグループ内でもフレッシュな存在だった。

そんな恵美梨さんが幹事のパーティーということもあり私は準備からワクワクしていた。

 

健太と雄一郎に朝ごはんを用意し、

 

 

12時にはお支度して、健太はパパと一緒にコモンホールに来てね」

そう伝えてホールに向かった。

 

机には恵美梨さん手作りのウォールアートやウェルカムボード、カラフルなバルーンなどが並んでいた。

シャーベットカラーで統一された小物類は子供を迎えるにぴったりな演出が所々に施されており、いかにもSNS映えするよう仕上がりはとても恵美梨さんらしさが感じられる雰囲気となっていた。

 

10時にはお花、11時にはお料理が届く予定となっていた。

特にお花はフラワーアレンジメント講師の由紀さんが憧れる有名アーティストに依頼したものにしようと先日、千奈美さん達と選んだものでサプライズを考えていた。

 

だが着々と二人で飾り付けを進めるうちに時計の針は10時半をそろそろ迎えようとしていた。

10時にお花が届くはずなのに・・・。さすがに遅すぎますよね。ちょっと業者に確認の電話を入れてみます」

そう言うと恵美梨さんはスマホを握りしめてコモンホールを後にした。

 

そしてしばらくすると小走りの恵美梨さんが泣きそうな表情で戻ってきた。

「どうしましょう!私の間違いで発送が明日着になっていてどう頑張っても間に合わない!お花がないお祝いなんてグループの皆さんなんて言うか!結衣さん!私どうすれば・・・」

「恵美梨さん、とりあえず落ち着こう。えーっと、この近くにお花屋さんは?」

「駅ビルに入っていたと思います。私買ってくるんで、お料理の受け取りお願いしても大丈夫ですか?」

「お料理は大丈夫。受け取っておくからお花屋さん行ってらっしゃい」

「ありがとうございます!急いで行ってきます」

そう言って恵美梨さんはヒールをカツカツと鳴らしながら、エントランスに向かって走って行った。

 

お料理の受け取りや飾り付けを終わらせると時計はあっという間に12時を迎えようとしていた。

そして、パーティーに参加するママ友メンバーとそのご家族が続々とコモンホールに集まってきた。