NOVEL

婚活物語〜ハイスペ男と結婚したい―vol.8 再会の果て〜

坂本さんと一度デートしたことをきっかけに、私は何度もデートに誘われるようになった。

誘われる場所はどこも私が行きたい場所だったし、お金も全部負担してくれる。

それを断る理由なんてなかった。

 


前回▶婚活物語〜ハイスペ男と結婚したい―vol.7 理想と程遠い相手~

はじめから読む▶婚活物語―ハイスペ男と結婚したい―vol.1~彼との出会い~

 

デートのたびに坂本さんは、私に告白してくれた。それだけ好きという気持ちが伝わる。だけど、私は坂本さんのことなんて好きじゃない。告白されて、振って、一体何度繰り返したことだろう。何回振っても、坂本さんは諦める気がないようだ。

 

そして14回目のデート。私が行きたいと言っていた少し高めのフランス料理のお店。その帰り道、私の家の近くで車を停めた坂本さんが、いつものように私の目を見て言う。

 

「どうしても好きなんです。付き合ってもらえませんか?」

いつもと同じ場所、いつもと同じセリフ。だけど、今日は違った。なぜだか、いつも以上に坂本さんが格好良く見えたのだ。

「いいですよ」

気づいたら、私はOKの返事をしていた。自分でも意識しないうちに、告白を受ける返事が出てきたのだ。

 

車の中でガッツポーズをする坂本さん。

「ありがとうございます、今日はゆっくり休んでください。それじゃ」と笑みを浮かべると、私に向かって手を振ってくれた。それに対して振り返す私。

 

私が求めているハイスペ男とは程遠い人なのかもしれない。だけど、何度もデートを繰り返すうちに、坂本さんの優しさに惹かれる自分がいた。もしかしたら、初めてちゃんと好きになれる相手なのかもしれない。

 

「好き」かどうかは、正直まだわからない。でも、坂本さんの印象が会うたびに良くなっていることは事実。そして私の高かったプライドも折れて、人に優しくできるような気がしたのだ。

 

坂本さんと付き合うようになってから、連絡を取る頻度が増えた。坂本さんは連絡をマメにしてくれる人で、メッセージの内容からも優しい人であることが再認識できる。

 

阿部さんにも坂本さんと交際することを報告したら、一瞬驚いた顔をされたが「応援しています」と笑顔で送り出してくれた。「ここからはお二人にお任せしますが、何かあったらいつでもご連絡ください」と言う阿部さんの表情は嬉しそうだった。

 

これから、坂本さんと一緒に幸せを掴んでいく。私は心にそう決めた。

 

付き合ってから3ヵ月ほどが経った。付き合ったばかりの頃と比べると坂本さんとの距離も縮まり「和哉さん」「莉奈さん」と、お互い下の名前で呼ぶようになっていた。

私自身も和哉さんとの未来を想像し出していたのだが、和哉さんがプロポーズする気配はない。付き合ってからまだ3ヵ月。そんなに結婚は急ぐようなことでもないかもしれない。だけど、本当に私と結婚する意思があるのかどうか、私の方が不安になっていた。

 

不安な気持ちを持ちながら日々を過ごしていたとき、携帯の着信音が鳴る。相手は、斗真だった。