NOVEL

婚活物語〜ハイスペ男と結婚したい―vol.7~理想と程遠い相手~

「初めまして、坂本和哉です」

目の前で挨拶する男性は、私の理想からはかけ離れた見た目。

唯一褒めるところがあるとすれば、高い身長だけ。

それでも念の為いつもの笑顔を作って、私も挨拶をする。

 


前回▶婚活物語―ハイスペ男と結婚したい―vol.6~「私、結婚に妥協はしたくないので」~

はじめから読む▶婚活物語―ハイスペ男と結婚したい―vol.1~彼との出会い~

 

「初めまして、松村莉奈です」

 

心なしか、坂本さんの顔が赤くなった気がした。きっと女性との交際経験は少ないのだろう。

 

私と坂本さんの簡単なプロフィールをお互いの担当が説明すると「あとはお二人でごゆっくり」と席を外した。二人きりになり、沈黙が流れる。先に口を開いたのは坂本さんだった。

 

「松村さんは、どんな男性と結婚したいですか?」

 

普通の合コンだったら、こんなことを尋ねる男性を選んだりはしないだろう。だけど、これは結婚相談所で出会った関係。結婚に関する話題はどの男性だって聞いてくる。

 

「真面目で仕事を一生懸命頑張ってくれる人ですかね」

 

当たり障りのない回答。ここで本当の希望を話したら、誰だって引いてしまう。もし本音を言って結婚相談所にバラされでもしたら、今後の婚活にも影響を与える。そう思った私は、いつも同じような返答をしていた。

 

今回もいつもと同じように答える。するとその言葉を本音だと捉えられたのか、坂本さんは仕事に関する話を次々にしてきた。

 

正直言って、全く興味がない。ただ、坂本さんは自分の親が開業した病院で働いていることがわかった。次期院長候補ともいわれているらしく、将来は安泰。しかも、坂本さんにはお兄さんがいて、お兄さんが両親と同居しているから私が結婚したとしても同居の必要はない。

 

結婚相手としての条件は完璧。だけど、この人と一緒の空間で過ごす場面を想像することができない。きっと坂本さんより良い人はいる。そして、私だったらそういう人と一緒になることができる。

 

その後は坂本さんの話を聞きながら、適当に相槌を打ってやり過ごした。1時間程度話したところで「そろそろ出ましょうか」と声をかける。すると、坂本さんの口から驚きの言葉が出た。

 

「松村さんに一目惚れしました。冴えない私ですけど、良かったら前向きに考えていただけませんか?」

 

これまで会ってきた男性からも好意を感じることはあったが、直接告白されたのは初めてだった。もし、坂本さんが誰もが振り返るほどのイケメンだったら、その告白は即決していただろう。

 

だけど、私は坂本さんと付き合う気はない。

 

「ごめんなさい、まだ坂本さんのことよく知らないので」