「私の方が可愛いから仕方ないでしょ?」
私が吐き捨てると、同僚は泣きながら私の元を去った。それ以来、社内の女性陣からは嫌われ、会社での居心地が悪くなっていった。だけど男性社員からの対応は変わらなかった。取引先からの印象も良かったし、会社の中では必要とされていた。
その先輩とは一度限りの関係の予定だったが、同僚の涙を見ると先輩のことが欲しくなった。同僚が苦しむ顔を見たかった。先輩も私には好意を寄せてくれていたようで、定期的に会う仲になる。いつの間にか私と先輩はセフレ関係になっていた。
先輩とのセフレ関係が続いて1ヶ月ほどが経ち、その日は仕事終わりに先輩が待つホテルへと向かっていた。名古屋駅の近くにあるホテルを指定されて向かっていると、目の前に見覚えがある人の姿を見つける。
「斗真?」
それは斗真の姿だった。咄嗟に声をかけ近寄るが、私の目に映ったのは衝撃の光景。なぜなら、斗真の隣には女性の姿があったから。
私の言葉に振り向く斗真。そして「誰?」と斗真に問いかける女性の姿。斗真は咄嗟に私から目を逸らすと、女性に向かって「取引先の人」と答えた。
「初めまして、松村莉奈です。高橋さんにはいつもお世話になってるんです」
得意の営業スマイル。斗真が「彼女」と紹介してくれなかったのは不満だったけど、社内での立場もあるのだろう。女性の方を見ると、広角を少し上げながら微笑んだ。
私とは違って、地味で大人しそうな人。どう見ても私の方が可愛いし、斗真の彼女に相応しくない。私よりも完全に歳上だし、メイクも薄い。こんな女のこと、斗真は何とも思っていないだろう。
勝手に斗真と一緒にいる女性を分析していると、私の視線に気づいたのだろう。女性は軽く会釈して私に向かって言った。
「私、高橋さんとお付き合いをさせてもらっている中山悠里です」
Next:4月4日
莉奈が先輩の待つホテルへ向かう途中、偶然斗真と出会うも隣には女の姿があった。斗真に問いただすも、彼の口から衝撃的な言葉が告げられる。