NOVEL

【新連載スタート】きっとこの先は。vol.1~この夜を迎えるまでは~

「とても良いですね。これならば、お客様にも心地よく過ごしていただけそう」

「ありがとうございます」

 

会話の途中に客間に入ったからだろう。美雪は少しばつが悪そうにしている。

 

「それじゃあ、他の場所をサポートしてあげてください」

わかりました、そう言うと久美は美雪を伴って手伝いに出て行った。

 

恋愛。最後に誰かに想いを抱いたのは、何年前のことだろう。・・・いや、本当はちゃんと覚えている。今から6年前だ。6年前、彼と過ごした時間は私に、恐らく一生のうちで体験するであろう感情の全てを凝縮して教えてくれた。あの時を最後に、私は恋愛というほどの大きな波を心に感じなくなってしまったのだ。

 

それからというもの、日々を修行と仕事に費やしてきた。

 

恐らく、これから先も、何も大きな感情は生まれないのではないかと、そう思う。

・・・いや、正確には思っていた。今日この夜を迎えるまでは。

 

 

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