NOVEL

彼女がいても関係ない vol.7 ~ボイコット~

礼子が大事な仕事を任せた佐智子が昨日から出社していない!?

営業部の女性社員は皆昼食を取らずに慌てた様子で佐智子の所在を確認するが・・・

 


前回:彼女がいても関係ない vol.6 ~仕掛ける手~

 

●打たれた布陣

10月2週目、金曜日の午後1時半。

山村礼子を始め、営業部の女性社員は皆昼食を取らずに慌てた様子で佐智子の所在を確認しようとしていた。

創業記念パーティーの準備で営業部が任された名簿の提出期限は今日の5時。それなのに礼子が仕事を任せた三村佐智子が昨日から出社していないのだった。

 

「え?三村さんが休み?」

昨日、出社した礼子に川崎乃亜が伝言を伝えた。

 

「はい、8時前に連絡があったとかで」

フレックスタイムで早出している2課の男性社員が電話を受けたらしかった。

 

「理由は?」

礼子に鋭く訊ねられ、乃亜は萎縮しながら答える。

 

「・・さぁ、メモがあっただけなので・・」

「任せてある名簿のことは!?」

「・・何も聞いていません」

 

それ以上は何も言えず、礼子は黙り込んだ。

昨日一日、何度も佐智子の携帯に連絡を入れたが応答はないままだ。それでも今日には来るだろうと思っていたが、佐知子は昼過ぎになっても姿を現さない。

 

「・・どういうつもりなの!」

 

礼子は頭を抱える。失敗すれば良いと思ってはいたが、丸ごと放り出されては礼子の責任の重さが違ってくる。そんな人材に丸投げしていたことを批判されれば、ただでは済まない。

 

「彼女の机の中にデータはあるの!?」

「・・それらしきものは何もありません」

 

すでにデスク周りを確認していた野中ひとみが答える。

 

「・・出来なくって逃げ出したんじゃ?」

 

面白がるような宮本百合子の言葉に礼子が鬼の形相で振り向いた。

 

「冗談じゃないわ!パソコンの中は!?」

「それが三村さん、6階のブースで作業していたので・・」

「もうっ!」

 

バンッ!

腹立ち紛れに礼子が佐智子の机の上を払う。勢いで飾ってあったマスコットが床に転がった。