「ここの花屋のアレンジは最高だから。これは私からのプレゼント。今度来るときは、笑顔で誰かへの贈り物をオーダーしてあげてね。」
「…でも…」
「花は人に思いを贈るものだから。…ね?花屋さん!」
リナの悪戯っぽい笑顔が、やけに可愛く見えた。
「はい。またのご来店お待ちしております」
どちらが店の店員なのか解らない状態だったが、女性の悩みは同じ女性の方が解るのだろう。どんなに話を聞いても、女性の論点を男として全て理解することは難しい。
女性が少しだけ、背筋を伸ばして店を出て行くのを見送った後に
「じゃあ…リナさんの為に、もう一つ作りますか!」
佐伯は、大きく手を鳴らしてリューココリネを手に取る。鼻腔を擽る良い香りは、金木犀にも負けていないと佐伯は思う。
それと同時に、リナにそんな感情を持たせた男に興味が沸いた。
「元旦那さんと、そのホストは似ていたんですか?」
言葉を濁らせて、軽く尋ねるとリナは遠い目をした。
「似てないよ。全然。どちらかと言えば、真逆だったかな。元旦那は独立してる人っていうか、相手にしてくれない人で…、年下ホストは…粘着系かなぁ…。ホストは、DV男でね。なんで好きだったのかなぁ…」
リナは持っていたカバンをもじもじといじりながら、佐伯と視線を合わせることなく佇んでいた。
「さっきの子…。昔の私に似てる気がしたの。女の勘だけど」
「女性の勘は…当たりますからね」
佐伯は違う事を思い出しながら、うなずいた。
〝自分だけを見て欲しい″〝結婚してほしい″〝仕事を辞めて欲しい″何度も言われた言葉が、脳裏をループする。
嫌いだったわけではないし、愛していなかった訳でもない。
ただ、自分の領域を守りたかっただけなのかもしれない。
「リナさんは、相手への執着心も愛だと思いますか?」
「…それも愛かな。でも、それは…自分への愛だよね」
〝自分への愛″その言葉は、今までハマらなかったピースが綺麗に入ったような感覚を与えてくれた。
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大切なプレゼントを贈りたいとリナに連れられ【ラナンキュラス】へやってきたしょーこママ。しょーこママは佐伯明人の過去を知っていた・・・?