「…元旦那さんの事。好きだったんですか?」
佐伯が訪ねると、リナはあやふやな表情を浮かべて頭を捻った。
「どうなんだろうね…。年上の大人な男に憧れて、私だけがのぼせてたような感じよね。だから…そのリバウンドで、年下のホストにハマって…。本当に、最低な母親だよね…」
ホストには誠がないと思っていたが、自分がラウンジで働くようになり、解ったことがあったのに、どうしても『アキラ』である佐伯が苦手であった事を面と向かって言われると、佐伯もどう反応すれば良いのか解らない。
「裕也はね、そのホストとの子なの。周りからはおろせって反対されて、産みたいって言った時…奈緒を引き取るって言われて」
「どうして?」
「奈緒を子守人員にしたいだけって、言われた。でも…実際…」
「そんなことないでしょう!」
佐伯は声を上げた。
奈緒を見つめる優しいリナの表情を知っているから、そう断言できる。頼りない仕草が少女の様に見える時もあるが、奈緒に対してのリナは立派な母親だった。
だから佐伯からしたら、羨ましい親子だった。
「そういって貰えると、嬉しいな。親になることと、他人を愛することは…別なんだって…今なら思える。彼の子を産みたいは、彼に直結させた思いにしちゃダメなんだよね。生まれた子には、その子の存在意義があるからさ」
男の佐伯からしたら、実感しきれない感情だった。なんとなく解るとしか言えない…。
反対に解った気になってはならない気もした。
「リューココリネの花言葉は、暖かい心、慎重な愛、そして信じる心の貴婦人なんです。やっぱり、リナさんにぴったりですね。」
リナは慌てふためき、また小動物のような動きをして「やめてよ…」と繰り返していた。
その時、展示してある花の影からさっきまで泣いていた女性が顔を出していた。
「女が涙を流す時って、男関係か、家族関係か…どちらかの事が多いよね。そういう時って、今が一番辛くて仕方ない気持ちになるけど…そんな事はないんだよ?たぶんね…」
リナはそういうと、佐伯の手からリューココリネの花束を引き抜いて、その女性に渡す。