NOVEL

家にも外にも居場所がない vol.2 ~お見合いという名の審査会~

 

良家の娘として母親に厳しく育てられた清美。

自分で何かを決めることを許されず、親の言いなりで過ごしてきたが、そこへお見合いの話を持ち掛けられる。

遊ぶ自由もなかった清美は異性と上手く関わっていけるか不安を覚えるが……?

 


 前回:家にも外にも居場所がない vol.1 ~言いなりの人生~

 

「お相手は外資系に勤めている優秀な方なのよ? 由緒ある家系で細川家にとっても相応しいわ」

「そうなんだ……」

 

嬉しそうに母は話すが私には戸惑いしかありませんでした。

家にとっては相応しいのかもしれませんが、私と上手くやっていけるかはわかりません。

家の良し悪しと、私との相性の良さは全く別の問題だと思います。

 

「どんな人なの?」

「何が?」

「いやだから、その、性格とか」

「いいに決まってるじゃない! 地元の有力者の息子さんで名古屋大学を出てるのよ? 住まいも南山のマンションに住んでいてもう文句のつけようがないわ」

 

笑顔で答える母ですが、私の意図するところとは全く違う答えを言います。

母にとって「いい人」とは高学歴のエリートを指す言葉であって、性格や品性を重要視してはいないのです。

学歴が良ければ、一流。学歴が良ければ性格も良い。そんな固定観念が母にはありました。

 

 

確かに学歴が良ければ性格に難があることは少ないとは思いますが、同じ学校に通っていた人でも性格は千差万別。

成績はよくても他人を蔑む人は一定数いました。

 そして何より、学歴や仕事が優秀でも、それが恋愛にも適応されるかは疑問があります。事実、私自身が有名な大学を出ているのに恋愛経験は無いに等しいからです。

 

「相手のことがよくわからないし、そんなお見合いだなんて言われても不安なんだけど」

 

結婚となると一生を供に過ごすことになります。健やかなるときも、病めるときも、ということです。

自分で選んだわけでもなく親の勧めで会う人と、一生を供にできるのか? 

よく知りもしない相手と結婚を前提にお付き合いできるのか? 不安を上げればキリがありません。

 

「これから互いに知っていけばいいのよ! 頭のいい人なんだし上手くリードしてくれるわ」

 

楽観的に語る母ですが、もし上手くいかなかった時はきっと私のことを激しく責め立てるのでしょう。

大人になれば自由になれると思っていたのに、今も親の影に怯えている自分が情けなくなります。