NOVEL

家にも外にも居場所がない vol.2 ~お見合いという名の審査会~

 

 

わざわざ母はフルコースを予約したため運ばれてくる料理も多く、あまり食べるほうでない私は庄司さんと食べるペースが合わずなんだか待たせているみたいで申し訳なかったです。

 

「すみません、食べるのが遅くて」

「いえ……母もそんなに早く食べるほうではないので」

「いいじゃない清美さん。ゆっくり楽しみながら食べましょう」

 

庄司さんのお母さまもフォローしてくださいましたが、食べながら話すのもどうかと思い私は反応に困ってしまいました。

母はマナーにも口うるさいので、そのあたりを確認するためにコースメニューを頼んだのかもしれませんが、小食の私にとってはいい迷惑です。

高いお店でどれも工夫が凝らされた料理だったのですが、味を楽しむ余裕はありませんでした。

 

「清美さんはどんな料理がお好きなんですか?」

「私は……。そうですね、薄味のものが。さっぱりした海鮮などが好みです」

 

どこかぎこちない探り探りの会話をする横で、

「この子ったらお肉とか濃い味のものが苦手なんですよ。やはり庄司さんのような体格の良い方は力の付く料理がお好きでしょう?」

 

 

母はどんどん庄司さんに話掛けていきました。

「私は、まぁ、肉料理などは好きですが。……海鮮などもいいと思います」

 

私が庄司さんと話していても母は事あるごとに割ってはいり、あれやこれやと質問攻めにしたり私の話をしたり。

これでは私が話す内容がなくなってしまいます。

 

「清美さんは何かお料理などはするのかしら?」

 

それは庄司さんのお母さまも同じでした。どんな仕事をしているのか。私生活はどうなのか。趣味はなんなのか。これでは面接を受けているようです。

 

「ええ、家ではよく料理を」

「清美にはよく食事の用意をさせていますので料理も充分できますわ。きっと庄司さんも満足してくれると思います」

 

さっきの会話からして絶対に味の好みが違うような気がするのですが、母の自信はいったいどこから来るのでしょう。

 

初めてのお見合いは終始こんな感じで、誰と誰がお見合いしているのかさっぱりわかりませんでした。

緊張している当人の代わりに話を進めているのかとも思いましたが、たぶんこの親たちに限ってはそんな気はないでしょう。

 

 

自分の子供に相応しいか品定めするために聞いている。審査会のようなお見合いでした。

 

 

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 家にも外にも居場所がない Vol.3 ~親を忘れられた楽しい時間~