NOVEL

家にも外にも居場所がない vol.4 ~親の無意識な妨害~

良家の娘として母親に厳しく育てられ、遊ぶ自由すらなかった清美。

そろそろいい歳だからとお見合いを持ち掛けられ渋々了承するが、お見合い相手との会話にも母親が口を出し会話が成り立たなかった。

それでも相手の気遣いでデートをすることになり、2人で名古屋駅周辺を回ることに。

相手の穏やかな性格にも助けられ良い雰囲気でお付き合いは進んでいるが、トラブルは突然やってくるのであった。

 


前回:家にも外にも居場所がない vol.3 ~親を忘れられた楽しい時間~

 

お見合いをしてから半年ほど。

私と庄司さんは概ね良い関係が続いていました。

『今週末は空いてますか? よかったらまた買い物にでもいきませんか?』

 

庄司さんは頻繫にデートのお誘いをしてくださいますし、私も仕事の都合が悪くなければお誘いを断ることはしませんでした。

休日は市内の商業施設を回ったり、映画を見たり。ありふれた過ごし方かもしれませんが特に不満のない過ごし方をしていました。

 

帰りが遅くなりそうな時は私の家に訪れて、夕食を振る舞いました。

「清美さんの料理はとても美味しいです」

にこやかに笑う庄司さんの笑顔がとても嬉しかったです。自分のしたことで相手が喜んでくれると、こんなにも満足いくものだと、初めて思いました。

 

今まで親の言う通りに生きて来て、自分で自由にしていられる時間などはありませんでした。

庄司さんとお付き合いして、気ままに買い物へ出かけたり、落ち着ける場所を回るようになって初めて楽しい時間を過ごせるようになった気がします。

結婚すれば、親から離れられて自由になれる。親に干渉されることなく過ごせるようになるんだと淡い希望を抱きました。

 

だからでしょうか。

 

「清美さん、別れましょう」

 

彼に突然そう言われた時は、何も考えられませんでした。

「ど、どうしてですか?」

止まった思考をなんとか振り絞り、震える声でなんとか理由を尋ねました。

 

「端的に言えば清美さんの自主性の無さに不安があるからです」

彼が言うにはこうでした。私は基本的に受け身の姿勢で自分から何も提案しないと。

 デートの誘いはいつも自分からで清美さんに誘われたことは一度もないし、食事やデートの行き先を尋ねても、「お任せします」、「どこでも大丈夫です」、「言うとおりにします」、と自分の希望を一切出さない。