「エシカル」と「消費」を合わせた『エシカル消費』という言葉をご存じでしょうか。
エシカル(ethical)の直訳は「倫理的な」という意味。つまり、法的な縛りはなくとも、多くの人が正しいと思っていることを指します。
私たちはこれまで、多くの資源やエネルギーを使い、大量生産、大量消費という行動で地球に大きな負担をかけてきました。このまま必要以上のものを作り必要のないものを消費し続けることで、地球上の資源が枯渇してしまうかもしれません。その反省から、人々や環境がよりよくなるように考えた消費行動が「エシカル消費」なのです。
環境問題に対する取り組みといえば「エコ活動」という時代から、環境だけでなく貧困や福祉、食品ロスなどの社会全体に関わる問題を倫理的な消費行動によって解決していこうとする「エシカル消費」の時代へ変化しました。
今回はエシカル消費の理念やSDGsとの関係、注目される理由についてご紹介します。
01/エシカル消費の3つの理念
- 「人・社会」
社会的に立場の弱い人たちを低賃金で働かせることや児童労働などを助長させないこと、助けが必要な人を支援する。 - 「環境」
水質汚染や天然資源の使いすぎなど自然環境を損なわないこと、自然環境をよくする。 - 「地域」
地域社会や地域経済を損なわず応援する。
エシカル消費は大きく3つのジャンルに分けられます。消費は私たちが生きていくうえで欠かせないものですが、その日々の消費を、課題を解決するための消費に変えていくことを求めているのです。
02/SDGsとの関係
簡単に言うと、少ない資源でより多く質の高いものを得られるような生産と消費の形を作り上げることを目指しています。 Ecological footprint(エコロジカル・フットプリント)という、人間がどれほど自然環境に依存しているのかを伝える指標によると、世界の人たちが日本人と同じ生活をした場合、約2.4個の地球が必要だと言われています。
生産者に求められるのは、少ない資源で質の高いものを生み出す生産方法の確立と、エネルギー消費や廃棄物の発生の抑制。消費者に求められるのは、余分に購入し過ぎないことや食材を使い切ることなどを意識した生活。ひとりひとりの選択が未来をかえるという意識を持つことが大切なわけです。
約8億人以上の人々が飢えに苦しんでいるといわれているのに対して、食べることができる食品の廃棄が世界で年間13億トンもあるというのが現実です。食品ロスは資源や労働力が無駄になることはもちろん、処理に伴い発生する温室効果ガスが気候変動を招くといわれています。
また、開発途上国の飢餓の原因のひとつとしてあげられる森林伐採は、環境や生態系を破壊します。破壊された場所は、農地として使用することができなくなり、さらに森林伐採が進むという悪循環が起こってしまうのです。消費者が、環境に負荷が少ない製品を選ぶことによって、持続可能な農業の促進に繋がるといえるでしょう。
不平等は、性別や年齢、障がい、人種、民族などを理由に起こります。また、世界の約10%のお金持ちが世界の所得の40%を占めるという推察があり、貧富の格差も問題となっているのです。障がいを持つ方が作る商品を購入することや、マイノリティと言われる人たちを差別なく採用している企業のサービスなどを利用することが、支援のひとつに繋がります。
このように、環境だけでなく貧困や福祉、食品ロスなどの社会全体に関わる問題を倫理的な消費行動によって解決していこうとするエシカル消費は、SDGsで課題とされている問題を解決するための手段と考えられます。
03/エシカル消費が注目されている理由
政府や自治体、事業者、消費者など多くの人から注目を集めているエシカル消費。SNSで検索すると、多くの例えがでてくるほど身近な言葉になりつつあります。しかし、それを一過性のブームとみなすのではなく、背景にある社会的事情、問題、課題を知らなくてはなりません。それではなぜ、こんなにも身近に感じるようになったのでしょうか。
まず、社会問題や環境問題が深刻な状況にあることに対しての、人々の関心が大きいことが挙げられます。
その問題解決のための対策として、エシカル消費が注目されるようになりました。社会問題とは主に、貧困、飢餓、健康、福祉、教育、ジェンダーといった問題です。例えば、現在日本の子供の7人に1人が相対的貧困といわれ、一般的な水準より低い状況で暮らしているといわれています。また、ジェンダー平等に関しては、3月31日に世界フォーラムで発表された数字によると、日本は153ヵ国のうち120位と、とても低い結果となっているのです。環境問題の例として、やはり地球温暖化が中心的なテーマとして取り上げられることが多いようです。
次に、ひとりひとりが何らかの形で関わり課題解決の力になれるということも、エシカル消費が注目されている理由だと言えます。
地球温暖化や環境汚染などというと、行政の問題として認識してしまいがちですが、個人が関係ないというわけではないのです。プラスチックによる海洋汚染を防ぐためにビニールやプラスチックゴミを減らすために、近年ではレジ袋が有料になりエコバッグを持ち歩く人が増えました。他にも、食品ロスを抑えるために節度のない消費を控えたりする取り組みなどは意識することで変わっていきます。
最後に、企業がエシカル消費を念頭にして、環境や公平性などに配慮した事業活動を行うことで、消費者、投資家、取引先といった社会全体のあらゆる利害関係者からの要求に応える取り組みのCSR(企業の社会的責任・Corporate Social Responsibilityの頭文字をとったもの)の実現促進に繋がるのです。
ひとりひとりのちょっとした危機感が、エシカル消費が注目されている理由なのかもしれませんね。
◆◆環境や人、社会への配慮
ひとりひとりが社会的な課題解決のために、何ができるのかを考えてみること、そして心がけることが、これからの未来にとって最も重要なのです。小さなことからはじめてみましょう。小さな行動を多くの人がすることによって、大きな一歩となるのです。
次回は、私たちが個人でもできるエシカル消費に対する活動と企業の取り組みについて併せてご紹介します。
Next:6月14日更新予定
「私たちにできるエシカル消費」をお送りします。お楽しみに!
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