世界にみられるチーズ文化。1回目はその歴史とナチュラルチーズのうち4タイプを紹介してきた。
今回は残りの3タイプとチーズの栄養について紹介していこう。
前回▶【チーズの世界にふれる】VOL.1チーズの歴史とその分類 |
チーズの分類とプロセスをおさらい
<ナチュラルチーズの分類>
⑤ウォッシュタイプ
表面がオレンジがかった見た目のウォッシュタイプ。チーズの熟成中に細菌が繁殖し、その表面を地酒や塩水で洗う(ウォッシュする)プロセスでつくられている。
独特の香りがするため、フレッシュタイプや白カビタイプに慣れている方は少し驚くかもしれない。
表面には独特の香りがありながらも中はおだやかで濃厚なクリーミーさ。
少し寒くなってきた季節にほっこりと暖かい部屋の中で味わいたい濃厚さだ。一度魅力にとりつかれたら抜け出せない、そんなチーズである。
その個性的な風味から全粒粉のパンやコクのある赤ワインなど、少し個性のある食材との相性が良いといえる。
例)リヴァロ、モン・ドール、タレッジオ
▼タレッジオ
⑥セミハードタイプ
他のタイプに比べ熟成期間が長く、次のハードタイプよりも短い熟成であるのがこちら。
ミルクのまろやかさに加えてナッティな香ばしさをもつセミハードタイプだ。1~6カ月の熟成で穏やかな味わいとしっとりした食感になる。強い個性はなく食べやすいのが特徴。加熱すると伸びるのでオーブン料理やトーストにもおすすめ。
特にラクレットはチーズそのものの名称であるとともにスイスやフランスでは料理の名前でもある。専用の加熱調理器でラクレットの表面を溶かし、茹でたじゃがいもにかける料理だ。チーズが日常に溶け込んでいるのがお分かりいただけるだろう。
例)ゴーダ、ラクレット、コルビー、モントレ・ジャック
▼ラクレット
⑦ハードタイプ
凝縮されたチーズの旨みを味わえるのがハードタイプ。チーズの中で最も硬質のタイプである。水分値が38%以下なのでミルクの濃厚さが際立ち、旨味を感じられるチーズだ。熟成期間は6か月以上。長いものでは3年程の時間をかけたまさに保存食の役割も併せ持っている。
有名なパルミジャーノ・レッジャーノは長い熟成期間の為に水分が少なくなり、白く結晶化した旨み成分がジャリジャリとした独特の食感。濃厚な味わいは主張が強くお酒にもひけをとらない。芳醇な風味と断面の緻密さは他で類をみないものだ。
その硬さのため、すりおろすことで料理を華やかに仕上げることもある。
例)パルミジャーノ・レッジャーノ、グラナ・パダーノ、チェダー、エダム、エメンタール、グリュイエール、ミモレット、コンテ
▼パルミジャーノ・レッジャーノ
チーズの栄養とは?
ミルクを主原料としたチーズは栄養成分が濃縮されているものである。含まれている栄養素を細かくみていくことにしよう。
①たんぱく質
チーズの主栄養素はたんぱく質。体を構成するために必須の栄養素であり、肉や魚、豆製品にも含まれている。チーズの場合は熟成期間中にたんぱく質がより細かいアミノ酸に分解されているので、消化吸収が良いのもポイントだ。
昨今ではボディメイクのために糖質を制限し、たんぱく質と脂質の摂取にスライドする方法が注目されている。運動も並行して行うことで筋肉の増強を促すが、その場合に不可欠なのがたんぱく質。どれだけ運動をしても体をつくるためのたんぱく質を摂取していないと効果はあらわれない。チーズもその一品として取り入れると良いだろう。
調理をしなくてもそのまま食べられるたんぱく源であるチーズ。
朝食にさっとつまんだり、サラダのトッピングに使用するなど手軽さが嬉しい。
②脂質
チーズで気になるのはその脂肪分ではないだろうか。
まったりと濃厚な風味は魅力的だが太りやすいのでは…と心配することもあるだろう。
もちろん過剰摂取は避けるべきであるが、たんぱく質や下記のミネラル・ビタミンを鑑みてもバランスが良い食材である。
チーズの種類によって脂質の量は様々。
まろやかな美味しさが魅力のクリームチーズやマスカルポーネ、ゴーダは比較的脂質の多いチーズである。白カビタイプの中にはクリーム部分を新たに加えてさらに濃厚にしたものもあり、当然全体の脂質量は高くなるが非常に濃く美味しい。
一方でリコッタやカッテージチーズはその半分以下の脂質量であり、気になる方はそちらをチョイスするのが良いだろう。これには製法が影響している。
リコッタはミルクのうち脂肪分が含まれるカード部分を除いた残りの液体であるホエイ(乳清)から作られている。ミルクを分離しているのでそもそも低脂肪だ。
カッテージチーズはミルクから脂肪分のみを除いた脱脂乳から作られておりこちらも低脂肪。いずれもあっさりした軽い風味である。
とはいえ、一度に食べられるチーズの量はそんなに多くないもの。
まずは楽しむことが先決かもしれない。
③ミネラル
最も効率的に摂ることができるのがカルシウムであろう。
ミルクを凝縮している為、例としてゴーダチーズ1切(30g)と牛乳コップ一杯(200ml)に含まれるカルシウムは同等程度である。
カルシウムは骨を作る栄養素。不足すると骨密度が下がるため骨がもろくなりやすい。さらに細胞の分裂や血液凝固作用の促進など多くの役割を担っている。
塩分が気になる方もいらっしゃるのではないだろうか。チーズの保存性を高めるために必要であり、微量の塩分がチーズの味わいをより高めてくれる。
青カビタイプのチーズやハードタイプは塩分が高めであるため、一度の摂取を少量にするかフレッシュタイプのものを選ぶなど工夫が望ましい。
④ビタミン
チーズには複数のビタミンが含まれている。
視力の維持や免疫力を高め、皮膚や粘膜にも影響するビタミンA。疲労回復や体の成長に関わるビタミンB2。そして抗酸化作用をもち細胞の健康維持をサポートするビタミンEである。
チーズだけで一日に必要な量を摂取することはできないが、栄養価の高い食材であることを覚えておいていただきたい。
上記の栄養素と共に意識したいのが食物繊維とビタミンC。両者はチーズにはふくまれていないので他のメニューで補ってほしい。
ラクレットで供されるじゃがいもはビタミンCを含んでおり理にかなっている料理だといえる。他にも、フレッシュチーズとフルーツを組合わせたり、ライ麦パンにチーズをのせるなど相性がよい食材が多いので是非取り入れよう。
日本でも定着しつつあるチーズ文化
食生活の広がりとともに現在は多くの輸入チーズが手に入る時代である。国内でも本格的なチーズがつくられるようになり、作りたてのフレッシュな味わいを楽しめるのは国産ならでは。
輸入品のチーズを選ぶときは航空便で運ばれたものがベターだ。数週間~数か月かかる船便よりも温度変化が少ないので現地と同じ味を楽しめる。
ネットや専門店では一般的なチーズだけでなく、クセがあるもの、特定の季節にしかつくられないものなどユニークな商品も。
そのチーズの魅力はまず食べてみないとわからない。臆することなくチーズの世界を広げていこうではないか。
前回▶【チーズの世界にふれる】VOL.1チーズの歴史とその分類
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