GOURMET

“食事”を楽しむ、という本質。「ラ・リリアーナ」後編

目指したのは、イタリアの温かな食卓。

“食事”を楽しむ、という本質。「ラ・リリアーナ」<前編>

ふくよかで芳醇な赤ワインソースの香りと、力強いイノシシ肉の香り。

この2つが食材として口の中で相まみえるとき、トスカーナの牧歌的な風景が一気に脳裏に浮かぶ。

 

日本ではなかなか入手できないイタリア食材のタルティーボも、ほんのりとした苦みと甘み、トロッとした食感でおもしろい。

手打ちならではのガルガネッリのもちもちとした噛み応えも最高だ。ジビエ肉と相性がいい秋トリュフは、言わずもがな。

 

ふんわりと漂う山の香りを鼻の奥で堪能しながら、ソムリエがセレクトした「ブルネロ・ディ・モンタルチーノ」の2012年ものをくっと煽れば、長く続くタンニンとともにその余韻をいつまでも楽しむことができる。

香り高い食材の数々と、それらが複雑に織りなす味わいを語らいあっていれば、時間が過ぎるのも忘れてしまうことだろう。

 「イタリアで3年間、国内各地をめぐって修行してきました。料理の腕も磨きましたが、一番学んだのは、イタリア人の食事に対する意識です」と國田シェフは回顧する。

 

30歳を前にして単身渡ったイタリア。最初に勤めたのは、トスカーナにある家族経営の小さなレストランだった。言葉も通じず、生活ですら不慣れな國田氏を、彼らは自宅に住まわせ家族のようにもてなした。

そしてシェフの母親・リリアーナがつくる夕食を、毎晩みんなで囲んだ。食べきれないほどの料理、ワイン、そして笑い声。心と体が休まるあたたかな時間が、そこには流れていた。

 

レストランで技術を学ぶ傍ら、國田氏は休日になるとリリアーナからトスカーナの伝統料理も習った。基本に忠実で、丁寧な料理。

家族の笑顔を支える家庭の味の大切さを、身をもって感じたという。

 それから年月は過ぎ。ようやく持った自身の店には「恩人」の名を冠した。

いつまでも初心を忘れないために。

イタリアの母・リリアーナが教えてくれた、「食事をすること」の楽しさを、忘れないために。

 

仕事で行き詰まったとき、余裕がなくなったとき。

そんなときにふとこの店を訪れたくなるのは、ここでの料理の数々に國田シェフの「初心」が込められているからなのかもしれない。

大切な人とここで楽しく食事をしたら、きっとまた新たな気持ちで日々を過ごせるはずだ。

 

 

<店舗情報>

ラ・リリアーナ

名古屋市昭和区滝川町47-24 光洋マテリカビル1F

052-837-0611

11:3014:30L.O.12:30)、18:0022:00L.O.20:00

水曜休

Pあり

 

http://la-liliana.com/

 

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