……そんな昨夜の顛末をリサに話し終えると、アユミは急に自信がなくなってきた。
「ねぇリサ、どう思う？ 付き合ってると思う？」
「本人に聞いてないの？」
「なんか、聞けなかった」
「正直、キスくらいじゃなんとも言えないよね」
やっぱりそうよね、とアユミはうなだれつつ、リサにもう一度念押ししてみる。
「だからね、なんとか４人で食事に行ってもらいたいの。付き合ってもない女の友達夫婦と食事するなんて、普通はしないでしょ？」
「まぁ、付き合ってなかったら、よく分からない状況ではあるかもね」
「既成事実を作りたいの」
「それで本当に既成事実になるか分からないけど、アユミがそんなに言うなら、旦那さんに都合いい日聞いておく。でも、ちょっと先になるかもしれないし、そもそも実現できないかもしれないからね」
「うん、その時はその時でまた考える。ありがとう」
リサと電話を切ると、アユミはふぅぅ、と大きくため息を吐いた。
今年の誕生日は土曜日だった。神尾と過ごすから、翌日の日曜も予定を何も入れないでおいたのだ。そのまま泊まることになって、初めて休日の丸一日を一緒に過ごすかもしれないと思ったものの、蓋を開けてみれば、曖昧な関係のまま期待の誕生日は終わってしまった。
いつもよりもいい店で食事をした。普段と違うのはそれくらいで、話す内容は相変わらず会社のことや食べ物やお酒のこと、そしてアユミの話ばかり。
会話はそれなりに盛り上がるのだが、神尾はいつも聞き役に徹してくれるので、アユミは少々喋りすぎてしまう。
（そういえば、神尾さんのことって、あんまり知らないかも）
食通でいい店に詳しいということは知っている。お酒が好きらしいということも分かっている。だが、休日に何をしているかだとか、学生時代からの趣味や家族構成だって知らない。
外面的な話ばかりで、心の交流のような会話は一切ないことが気になる。