NOVEL

踏み台の女 vol.6 ~特別な誕生日~

ついにハイスぺ男子・神尾と過ごす誕生日当日。

2人の関係は一体どうなるのか・・・?

 


前回:踏み台の女 vol.5 ~女友だちとの夜~

 

今年の誕生日は心が躍る。

 

アユミの誕生日は1月だ。

 

付き合っている相手がいない年は独身で恋人のいない友達が誕生日パーティを開いてくれた。

名古屋駅の店を予約し、冬にしては少しだけ露出した服装をするように示し合わせ、女同士でキャアキャアと乾杯していると、大抵男性のグループに声を掛けられ、誕生日だと言えば、一緒に飲みお祝いをしてもらう流れになることが多かった。

そうして知り合った男と付き合ったこともあったが、大抵は数カ月も持たない。

誕生日マジックと言うべきか、最初は盛り上がるのだが、寒い冬が過ぎ少しづつ気候が和らいでくると気がそげてしまう。単に寒さを温め合う相手がほしかったのだろうと思う。

 

だが、そういう男たちと神尾は違う。

2年間同じ会社で働き、普段の働きざまや評判も知っているし、3度もデートしているのに、体の関係には進んでいない。段階を踏んで交際へ進んでいる感覚が、アユミに今までと違う真剣な恋愛を予感させていた。

 

クリスマス時期には、ゲートモールタワー前に大きな白いクリスマスツリーが鎮座していたが、今日はスポーツカーの展示がしてある。普段何も展示されていない日よりも人が多く集まっていて、みな興味深げに高級スポーツカーを眺めている。

そんな光景もほほえましく穏やかな気持ちで人込みの中を歩いていられるのも、神尾との誕生日デートに心躍らせているからだとアユミはさすがに自覚していた。

 

今日は、神尾から告白される。

この数日、アユミはそう信じて疑わなかった。

ラインのやり取りは以前より一層親密なものだったし、会社でも目を合わせて微笑み合う瞬間に特別なものを感じる。初めて二人で飲みに行った日から毎週と言っていいほど、デートをした。名古屋駅から少し離れた場所で、ただご飯を食べてワインを飲み、2軒目のバーのカウンターで少しだけ指を絡ませ合う……そんなデートを1カ月続けた。

 

今日こそは、と少しだけ奮発してサルートの新作の下着も新調した。

上下だけでなく、ランジェリーも揃えると全部で3万はゆうに超えたが、それでもこれで神尾との関係性が確固たるものになると考えると、安いものだ。