清水となら結婚してもいいのではないか、そう思えた。
「愛沙雰囲気変わったよね。」
夕飯の支度をしていた愛沙は、隣でお米をとぐ母から言われ、ぎくりとした。
「そう?」
「うん。もしかして、好きな人でもできた?」
いつだって、母親というものは勘が鋭いものだ。
―お母さんには婚活のこと内緒にしてるのに…。
愛沙は観念したように認める。
「うーん、好きというか。今婚活してるんだよね。そこでいいなって思う人がいる」
「なんか最近違うと思った!相手はどんな人?」
「フランス料理のオーナーシェフしてる人」
「まあ!いいじゃない!料理男子ね!今度うちに連れておいで」
愛沙はうーん、と唸った。
「そのうちね」
まだ結婚すると決まったわけではない。
愛沙はできれば清水と結婚したいと思っていたが、まだ決心ができているわけではなかった。
「お相手が料理されてるんなら、愛沙も手伝えるわね。和食のことならむかしっから叩き込んであるから!」
「いや、わたし、結婚したら仕事しないよ」
「え。そうなの?」
「そりゃそうじゃん。そのために婚活してるのに。結婚したらのんびり過ごしたいよ。子供もとくに欲しいと思ってないし」
子育てには追われたくない。
「…それは彼に言ったの?大事なことだから、ちゃんと折り合いつけないとね」
「わたしは折れるつもりはないよ。それを許してくれる人とじゃないと結婚しないし」
わたしと結婚できるというだけで、相手の男性はありがたいというものではないか。
美人でスタイルも良くて、和食はお店並に作れる。
ワインだって詳しいから食事もより良いものになるだろうし、夜の方だって経験も豊富にあるから楽しませられるハズだ。
こんなに良い女はなかなかいないだろう。