NOVEL

選ばれない女 vol.8~やっぱりわたしの目に狂いはなかった~

 

清水と顔合わせの日。

 

おろしたてであるカーキのロングジャケットを羽織る。

全身鏡でコーディネートを確認する。

 

「うん!今日もばっちり!」

 

待ち合わせ場所は、栄の老舗百貨店に11時。

創作鉄板料理が食べられる店で食事する予定だ。

栄から徒歩圏内らしく、清水も歩いて来ると言っていた。

待ち合わせ場所に着くと、すでにそれらしき人物が立っていた。

 

近づいていくと気配を察して、こちらに気づく。

 

「中込さんですか」

「はい」

 

シンプルな白のインナーに、ネイビーのジャケット。

グレーのかっちり目のズボンに焦げ茶色の革靴を履いている。

童顔ではあるが、どことなく落ち着いた雰囲気が漂っていた。

 

―うん。やっぱりわたしの目に狂いはなかった。

 

「初めまして。清水昇太です」

「初めまして。中込愛沙です。よろしくお願いします」

「じゃあ、早速行きましょうか。どこか寄っていくところありますか」

「いえ、特にないです」

 

気が利くな、と思った。

 

隣を歩く清水は、背筋が伸びて堂々としている。

 

―今のところ合格じゃない?

 

最先のよさに、愛沙は満足していた。

 

しばらく歩いて、店に到着する。

店内はクラシックモダンで統一されていた。

カウンター周りには巨大な水槽があり、魚が泳いでいる。

個室をとっていてくれたようで、案内される。