清水と顔合わせの日。
おろしたてであるカーキのロングジャケットを羽織る。
全身鏡でコーディネートを確認する。
「うん!今日もばっちり!」
待ち合わせ場所は、栄の老舗百貨店に11時。
創作鉄板料理が食べられる店で食事する予定だ。
栄から徒歩圏内らしく、清水も歩いて来ると言っていた。
待ち合わせ場所に着くと、すでにそれらしき人物が立っていた。
近づいていくと気配を察して、こちらに気づく。
「中込さんですか」
「はい」
シンプルな白のインナーに、ネイビーのジャケット。
グレーのかっちり目のズボンに焦げ茶色の革靴を履いている。
童顔ではあるが、どことなく落ち着いた雰囲気が漂っていた。
―うん。やっぱりわたしの目に狂いはなかった。
「初めまして。清水昇太です」
「初めまして。中込愛沙です。よろしくお願いします」
「じゃあ、早速行きましょうか。どこか寄っていくところありますか」
「いえ、特にないです」
気が利くな、と思った。
隣を歩く清水は、背筋が伸びて堂々としている。
―今のところ合格じゃない?
最先のよさに、愛沙は満足していた。
しばらく歩いて、店に到着する。
店内はクラシックモダンで統一されていた。
カウンター周りには巨大な水槽があり、魚が泳いでいる。
個室をとっていてくれたようで、案内される。