腕組みをして俯いている父の隣で、母が言いにくそうに話し始める。
「真奈美、友則さんに浮気されてたって」
「えっ」
―あの誠実そうな友則さんが…?
突然の言葉に、愛沙はショックを受けた。
「いつから?相手は?どこで知り合ったの?」
「アプリで知り合った年下の女の人らしいんだけど、いつからかはちょっと…」
「相手とは話し合ったの?」
「どうやらその人、名古屋の人らしくて。それで直接話をしに帰ってきたみたいなの。名前は…かなもり…みさと、だったかな」
名前を聞いて再度驚愕した。
「みさとって、美里ちゃん?!」
「知ってるの?」
「知ってるもなにも、会社の後輩だよ!…入籍するって言ってたのに…。どういうこと?」
両親から、真奈美から聞いたという話を聞く。
どうやら美里は、マッチングアプリで出会った友則と不倫していたようだ。
美里は既婚者であることを知っていたにも関わらず関係を続けていたらしい。
夫の行動が怪しいと睨んだ真奈美が探偵を雇い、発覚。
白を切っていた友則だったが、証拠をもとに問いただすと、白状した。
〝美里とは遊びだったんだ
″と弁明した。
別れようともしたが、それに納得できない美里が強行手段にでた。
美里は友則となんとしてでも結婚しようと、周りに「入籍する」と言い回っていたようだ。
「…明日、会社で聞いてみようか」
「心配する気持ちはわかるけど、愛沙は会社に居づらくならない?真奈美も事を大きくしたくないだろうし、あまり無茶はしないでね」
静かに母が言う。
友則を気に入っていただけあって、相当参っているのだろう。
さすがに表情が暗い。
―こんなことってあるんだ…。