マッチングが成立した弁護士とフランス料理店でランチをすることになった愛沙。
だが、彼の妙な言動に引いてしまう…。
はじめから読む▶選ばれない女 vol.1~婚活パーティー~
待ち合わせは金時計前に12時。
そこからフランス料理店でランチをする。
店の雰囲気に合わせて、シンプルですっきりとしたロングワンピースを着てきた。
ポリエステルツイルの上品な揺れと落ち着きがあるスカートだ。
―まだかな。
待ち合わせ時間を2分ほど過ぎたころ。
見覚えのある一人の男性が、腕時計をちらちら見ながら早歩きで向かってきた。
遠目に見ただけだが、あれはロレックスのロレゾールモデルだろうか。
イエローゴールドがきらりと輝いている。
「中込さんですか?」
「はい」
「はじめまして。駒沢です。ごめんね、遅れちゃって。ちょっと混んでて…」
駒沢優は、結婚相談所で会った弁護士である。
一週間前にマッチングし、今日が初めてのデートであった。
オーダーメイドと思われる上品で淡く明るい青のスーツに、ブラウンの革靴。
くすみがかったボルドーのネクタイがおしゃれだ。
写真の印象よりしっかりとした印象だった。
ややエラの張った顔に、アーモンド型の目と、程よい大きさの鼻がバランスよく並んでいた。
声は高めのよく通るものだった。
髪は、ワックスできっちりまとまっている。
「いえ。わたしも今来たところです」
身長165センチの愛沙が少し見上げて言う。
「それはよかった。駐車場に車を置いてるから、行こっか」
リードしているつもりなのか、気づいていないのか、駒沢は愛沙の少し前を歩く。
―もう少しゆっくり歩くべきじゃない?
駒沢が歩く度、コツコツ鳴るかかとがうるさい。
「あー、休日だからたくさん人がいるね」
前髪を人差し指で流しながら、駒沢が振り返る。
「そうですね。天気もいいし過ごしやすいですもんね」