NOVEL

玉の輿vol.8 ~迷宮の章~

御曹司の嫁として通う夜会で出会った幻…。

喉から手が出る程に欲していた夫。友人だと信じていた女。

そして…嫁姑の関係。

珠子は何処に向かっていくのか…?

 


前回▶玉の輿vol.7 ~報復の章~

はじめから読む▶玉の輿 vol.1~珠子の章~

 

新婚生活を始めて、3カ月が過ぎた。

 

金持ちは暇なのか?と疑いたくなるくらいに、週に23回夜会があり、その度に珠子はYouTubeで検索したドレスコーデや、ヘアメイクを自分なりに研究を重ね、真似るようになっていった。

初めの頃は、その度にサロンへ行っていたが、家事をしなければならないわけでもなく、ただ家で過ごすことに飽きてしまい、自分磨きの為のグッズや勉強が趣味になった。

 

夜会には、必ず麻梨恵が姿を現す。

狡猾に獲物に狙いを定めて飛んでくる、猛禽類のような女だ。

雄一郎も相手はするが、ゴシップの事もあってか、人前では麻梨恵を避けているように見えた。

 

珠子自身も、初期は『優しそうな奥様』と言われていたが、今や『お若い綺麗な奥様』と称されるまでになれた。

珠子も、麻梨恵のように顔面が変わるような整形はしないが、ヒアルロン酸の注入や、エステへ通うのは日課になっている。

今までの自分とは違う。

金額を気にすることなく、自由に生きている実感だけはある。

 

雄一郎も、あの初夜のやり直しをした日から、珠子への対応も温和に戻ったような気はする。

それでも、雄一郎を狙うハイエナは麻梨恵だけではないし、外で遊んでいるようだ。

西園寺グループの会社運営に直接的に関わっていないし、義父の道隆の目が黒い間は、自分が出る幕はない事を本人も知っているだろう。

役員連中は、そろったように「運営にもそろそろ…」とは言うものの、それが本音にはどうも見えなかった。

 

珠子から見ても、雄一郎はただの年を食ったボンボン。

もうすぐ初老を迎える男にしか、見えなくなっていた。

 

「最近、綺麗になったわね。珠子夫人」

関連企業の合同会に珠子が一人で出席した時、麻梨恵が声をかけて来た。

相変わらず酒焼けしているハスキーボイスが、勘に触る。

だが、その隣にいた青年は、社会人スーツを着こなしたジェンダーに見える美少年だった。