NOVEL

年収一億超えの妻たち vol.9~逡巡~

「私、どうしたらいいの?」夫の不審な行動に晴れぬ心。

迷った末に辿り着いた結論は。

 


前回▶年収一億超えの妻たち vol.8~疑惑~

はじめから読む▶年収一億超えの妻たち vol.1~結婚記念日なのに~

 

 

沈む夕日。

窓から、その光景を呆然と眺める私。

あれから何時間が経過したのだろうか・・・?

口紅の付着したハンカチを発見し、心が一気に沈み込んで、それから・・・?

正直、あれからのことは殆ど覚えていない。

ただ苦しくて、切なくて、そんな思いに苦しめられて…。

気が付けば、かなりの時間が経過していた。

 

家政婦の早苗さんがいるといっても、その全てを彼女に任せるわけにもいかないし、私にだってやらなければならないことは少なからずあるが…。

それを実行に移すだけの気力がない。

 

(まだ、やらなければならないことはあるのに…)

 

しかし、そんな思いとは裏腹に肝心の体の方が、まるで別の存在であるかのように動かなかった。

 

(何で動いてくれないの?)

 

私は自分の体に対して、心の中で問いかける。

当然、答えなどありはしない。

でも何で、こんなにも体が動かないのか・・・?

 

こんな経験は初めてだった。

これが無気力というものなのだろうか?

初めての感覚に戸惑いが生じる。

しかし、このままというわけにもいかない。

 

(でも、一体どうしたら?)

 

私は頭を悩ませた。

 

そんな時、不意に早苗さんが声をかけてくる。

 

「大丈夫ですか、奥様? 顔色が優れませんが?」

「あ…早苗さん? え、ええ、大丈夫よ」

「そうですか…。それなら良いのですが…」

 

彼女は私の言葉に頷く。

 

でも・・・。

 

その表情を見る限り、きっと早苗さんは私の言葉を信じてはいないだろう。

明らかに心配しているであろう表情が窺えるからだ。

つまり、隠したところで無駄ということ。

 

それならばいっそ・・・。