NOVEL

運命の輪 vol.8~ざわめき~

「先生、ご挨拶をお願いします」

由衣が正面の台に設置されたマイクの方へ誘導する。

 

「いやぁ、照れるな。ちょっとだけな」

小学校の頃から終わりの会も短かった。

「人前で偉そうに話をするのは苦手なんだ」

いつもそんなことを言っていたっけ、と紗希は思い出していた。

 

「えー、20年ぶりの同窓会。呼んでくれてありがとう!預かっていた宝物も、ちゃんと持ってきたからな!」

今回もそれだけ言うと、さっさと壇上から降りてくる。

 

「先生、それだけ?」

「久しぶりなんだから、もっと話してよ」

声が上がったが、手を振りながら用意された席に腰を降ろした。

 

「ではしばらくの間、お料理を楽しみながらご歓談ください」

由衣が同窓会のスタートを告げる。

軽やかな音楽がホールに流れ始めた。

 

「紗希ちゃんはこっち」

由衣が受付に居た紗希を手招きする。

後藤先生と由衣と同じテーブルに席は用意されていた。

1品ずつサービスされる料理を楽しみながら、あちらこちらで昔話に花が咲く。

紗希は気になっていた名前のことを聞きそびれていた。

 

  • 地球儀からの手紙

 

1時間ほど過ぎた頃、由衣がマイクを握る。

「皆さま、本日のメインイベントです。後藤先生お願いします」

 

促されてもう一度、後藤先生が台に進み出た。

手には丸い地球儀を携えている。

20年前に自分に宛てた手紙を入れたあの地球儀だ。

「じゃあ、ひとりずつ名前を呼ぶからな、取りに来てくれるか」