NOVEL

運命の輪 vol.8~ざわめき~

予め切れ目を入れてあったのだろう。

器用に真ん中でパカっと地球儀を割ると、中から手紙を取り出した。

 

「赤井 博一」

「はーい」

「石川 翔」

「はいはーい」

出席番号順に名前が呼ばれていき、元気な声が応える。

まるで小学校時代に戻ったようで不思議な気持ちになる。

最初はクスクス笑っていた者も自分の順番を神妙な顔つきで待ち始めた。

 

数名が呼ばれ、やがて紗希の番になった。

「宮田 紗希」

「はい」

紗希が呼ばれた瞬間、少し会場がどよめいた。

「・・?」

「ほら紗希ちゃん、貰いに行って!」

何だろう、と足を止めた紗希を由衣が促す。

後藤先生から自分の手紙を受け取った。

 

残りの数名も名前を呼ばれ、全員が手紙を手にする。

 

「さ、これで会場のみんなに行き渡ったな」

後藤先生が残りの手紙を纏めて、紙袋に入れる。

今日来られなかった人の手紙だろう。

 

「では皆さま、お待たせしました。開封してください!」

由衣の号令で、それぞれ自分の手紙を開く。

 

紗希も手の中の手紙をそっと開いた。

20年後の私へ”

そんな言葉で始まった手紙には忘れていた文章が書かれていた。

 

小学校の頃の自分が書きそうな言葉が並んでいた。

「大きくなったらママと旅行に行きます。ママと楽しく暮らします」

ママと、ママと・・そればかり。

(思った通りね・・)