同窓会の幹事をしている由衣は紗希からの返信ハガキを受け取ったのだと言う。
そこに書かれていた携帯電話を見て我慢できず、コールしたのだと笑った。
「ね、同窓会までに会わない?」
由衣が提案する。
「そうね、私も会いたい」
紗希も久しぶりに顔を見たいと思った。それで予定を合わせ、5月に入ってすぐの休みに待ち合わせたのだった。
由衣が指定したのは自由ケ丘駅からすぐの英国風カフェ。
奥まった場所にあるせいか、休日だというのに客の姿は少ない。
「素敵なお店ね」
紗希がそう言うと由衣が目を輝かせた。
「でしょう?学生時代からのお気に入りなの」
中学からに有名私立女子高に進んだ由衣。そのままエスカレーター式に大学へ進んだと確か母から聞いた。
市内屈指の伝統ある私立中学校へ進学した紗希とは同じ名古屋市内なのに接点がなかった。小学校時代はそれなりに仲がよかったのに、何故だったのだろう。
ふと、今さらながらの疑問が湧く。
「何にする?おすすめはね、このアフタヌーンティーセット」
メニューの最初に載せられている3段重ねのセット。
一番下の段にはサンドイッチ、カナッペ、ビスケットが並んでいる。中段はペストリーとマカロン。そして一番上の段はミニサイズのケーキやゼリーとフルーツに溢れていた。
「美味しそうね」
「でしょう?」
由衣が得意げに覗き込む。その仕草が小学校の頃と同じで紗希はクスッと笑った。
「なぁに?どうかした?」
由衣が首を傾げて尋ねる。その癖も変わっていない。
「うん、これにするわ」
「じゃあ私も!」
ウエイターが察してオーダーを取るために近付いてくる。由衣はセットを2つと飲み物にシャンパンを頼んだ。
「大丈夫よね?1杯くらい」
「ええ、平気」
注文を終えて、ふたりはようやくきちんと向き合った。