それから私たちは言葉もなく、バイクに乗ると彼の家へ向かった。
少し散らかっているけど、彼の家は整頓されていて花やドライフラワーがところどころに花瓶に飾られている。
私たちは明かりを付けないまま、そのままもつれ合う様に部屋に入るとノアくんは人が変わったかのように私に覆い被さってきた。
「抱きたい」
掠(かす)れた熱っぽい呟き。汗に混じった男性の匂いが気持ちを昂らせる。
私は答えのように、彼の手のひらを誘いそっと唇を寄せた。
彼は私を抱える様に隣の寝室の扉を開く。
私の左手を取ると、薬指の指輪を噛む様に抜き取った。
ベッド脇のテーブルにカランと置かれた瞬間、彼は止めるものがなくなったかのように私をかき抱く。
私はそっと彼の頬を両手で包み込み
「私を忘れられないようにしてあげる」
その渦に飲み込まれるように、私は彼と快楽へ落ちていった。
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