NOVEL

引きこもり女の裏側 vol.9 ~彼との出会い~

Cを〝彼″と呼ぶのはCだと味気ないからで、〝彼″に変わる良い名前を付けようとしたが、思い浮かばない。

それならまだ名前を与えなくていいか。

彼のイメージは、これからどんどんわたしの中で変わっていくに違いない。

 

 

プレイリストに、新たにロン毛のくりりんが追加された。ちゃらちゃらしているのかと思いきや、一本筋の通った男気を感じたので採用した。

ビルと、くりりんと、例の彼。

しばらくはこの3人で回していこう。

 

その後くりりんからも、ビルからも連絡がきて一夜を過ごした。

終わって帰るときは、まあこんなものだろう、と思った。別れると虚しくなり、また次が欲しくなる。そんなとき決まって思い出すのは、〝彼″のことだ。

 

あの人はどうしてるんだろう。

 

幸枝からは連絡をしていないし、あちらから連絡がくることもない。

最後に会って、2週間ほどだろうか。

 

〝ゆくゆくと言った言葉は、ただの気まぐれだったのだろうか。

 

連絡がこないかもしれない、もう会えないかもしれない。終わりの見えない暗闇の中に立っていると、不安が膨らむ。自分から連絡をしてしまったら、気持ちに歯止めがきかなくなりそうだ。

深入りはしてはいけない。

彼とわたしは、最初から長く続く関係ではないとわかっていたはずだ。

 

彼には、彼女もいる。

なにも道は彼だけではない。

違う方向に目を向けよう。

 

そうだ。

 

もっと、別の男を探してもいいじゃないか。

今度は、包容力や余裕のありそうな年上のお金持ちにしよう。

 

心のどこかで、まだいつか、彼から連絡がくることを期待している幸枝がいた。

 

 

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公平を失った代わりを得るために始めたマッチングアプリであったが、人に会っても、会っても、心の穴はますます大きく闇が深くなっていく気がする。今ではもう手に入れられない公平に重ね、〝彼″に対する想いは、ますます募っていくばかりで・・・?