お昼休憩は食堂で、ひとりで食べる。
今日はラーメンの気分だ。
箸を片手に、こっそりとアプリを開く。席は隅っこ。周りには誰もいない。
以前は真剣な交際を希望してはいないとプロフィールに記載しているからか、くる連絡は希望通りのものが大半だった。
今回も大漁に釣れるかどうか。
朝登録をして、すでに3つ〝いいね″がついていた。ひとりひとり確認する。
さすがにプロフィールだけでは信頼できそうかはわからない。とりあえず、全員とやりとりをしてみることにした。
―この感じなら、もう少しハイペースでやり取りしないといけないかも。
携帯から視線を逸らしたとき、
「なーに見てるのー?」
気が付くと斎藤が隣に立っていた。手に持つトレーには、日替わりランチのハンバーグが乗っている。
「あれ、来てたんだ。気付かなかった。」
「あまりにも一人で哀愁を漂わせてたから、来ちゃった。隣いい?」
携帯の画面を落として、白衣のポケットにしまう。
―見られてないよね…。
見られていたら、最悪だ。幸枝がアプリをしていたと知って、斎藤は吹聴するような人ではないが。
「なんかさ、この前アプリの話ちょろっとしたじゃない?わたしも気になって、色々調べてみたんだよね。」
「なんで?」
最近アプリを始めた幸枝にとっては、タイミングがよく、ギクリとする。
―バレてないよね。