職場での幸枝は
”ミステリアスだが壁があるわけでもない、人畜無害の真面目な美人”。
そんな幸恵が家でやっている意外なこととは・・・
カーテンを閉め切っているため、今が何時か全く検討がつかない。静まった部屋に響くのは、冷蔵庫の機械音のみ。天気は荒れていないようだ。
「はあああああ。動きたくないなー。」
ベッドの上で仰向けになりながら、ぼーっと天井に目を向ける。
―あんなところにシミができてる。
どうやったら天井に汚れがつくんだろう、と考えて、やめた。傍らの置時計をみると、14時を少し過ぎていた。
「うーん!」
体を起こして伸びをする。今日は土曜日だし、予定はない。
ゆっくりと部屋に引き込もれる。外に出るのはだるい。まだ重い体を気合いで立たせ、歯を磨き、顔を洗い、髪を軽く整える。
「朝ごはん?昼ごはん?は…ま、いっか。」
お腹は空いていない。
それよりなにより、と携帯電話を手に取る。
「うわ、めちゃきてるじゃん。」
携帯電話を両手で握り締め、にやりと笑う。
公平とはあれから話し合いをしたものの、何回話しても平行線をたどり、結局破局。好きな気持ちはあったのだが、最後はお互いを納得させようと意地になっていた。こんなにも呆気なく終わってしまうものかと思った。
斎藤にも別れたと話が伝わったようで、応援してくれていただけに残念がっていた。
「二人で決めたことだから、仕方がないね。」
と言う斎藤の表情をみて、幸枝も心底申し訳ないと思った。
公平と別れても、仕事は真面目にこなした。内心落ち込んではいたが、それを出さないようにしていた。
斎藤も気を利かせて、公平のことは聞いてこないし、話題にもしない。職場では当たり障りのない会話をし、いつものようにこちらの情報はあまり漏らさない。