新一から再度会うことを誘われた美果。約束しつつも罪の意識を感じている中、高史からメッセージが届いていたのだった。
前回:Silver Streak vol. 6~魅惑と罪悪感、元彼との再会は何気ないものだったが…。~
はじめから読む:Silver Streak vol.1~スイートルームから毎朝出社する女性。ホテルのバーでの思わぬ出来事とは?~
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ケーキを食べ終え2杯目のアールグレイティーを飲み、その後はアルコールに移行する。
今日は気兼ねなく加奈子と飲める日だ。
せっかくだから外に出ようか?という話になり町家通りに向かった。普段あまり来る場所ではないが、通り全体の雰囲気が美果は好きだった。
楽しく食べ、飲んだ後にスマホに気づいたのはもう寝る直前だった。
高史からのメッセージが来たのは数時間前のことになる。
そこには、ヴァカンスで3週間帰国することが書かれていた。帰国日は新一と会う翌日だ。
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「美果さん?久しぶりだな」
斜め後ろからの声に振り向くと、そこには義兄が立っていた。
金曜日の仕事を終え、早めにバーでくつろいでいた時だった。
目の前にはいつものホワイト・レディだ。
「お義兄さん!ご無沙汰しております。お変わりないですか?」
質のよいスーツを身に着けた義兄は相変わらずすらりとした長身である。
秘書もおらず一人でこのバーに来たようだった。
「そのまま帰ろうとしてたんだけどね。美果さんがバーにいるってスタッフに聞いたから」
やはりホテル内のスタッフには行動を見られているのだ。
当たり前なのだが改めて実感する。
隣いいかな?と言って義兄はギムレットをオーダーした。
高史がヴァカンスで帰国することをさっそく話す。
「それであれば空港に迎えを手配しようか。美果さんも行くだろう?」
「ええ、仕事を休んで行くつもりでした」
その場で秘書に電話する義兄はテキパキとしている。さすが次期社長になる人間だ。
初めて会った時はだいぶ緊張したのだが、こちらが気を遣いすぎないよう自然にサポートしてくれたのだった。
器の大きい人ほど人間性があるのがよくわかる。
相手の話を引きだすスキルが高いからか、美果は自然と仕事の話や昇進にトライしていることを話していた。
義兄は今新しいプロジェクトを抱えているらしく、詳しくは言わないが少し気疲れしているようだ。
本社内に新しい部署を作るらしい。
「直接言ってくるわけじゃないけど、新しいことを行おうとすると反発もそれなりにあってね。ま、わからないことをやり始めるのは誰だって怖れるものかもしれないな。進めるには価値観が通じ合える相手が一番なんだけどね」