NOVEL

2番目の女 vol.9 〜既読にならない週末〜

 

「結婚式に招待する人、決まった?」

 

気づけば結婚式の日にちも近づいていた。大輔くんは、エクセル上に打ち込んだ自分の友人の名前を見ながら私に聞く。

 

「うん、決まったよ」

 

私はノートにメモしていた名前のリストを渡す。そのリストを見て「良かった、何か悩んでるみたいだったから」と安心したように笑ってくれた。

そんな大輔くんの笑顔を見ると、ずっとこの笑顔を見ていたくなった。大輔くんと出会えて、付き合えて、結婚できて、本当に幸せだ。私は思わず大輔くんに抱きつき「いつもありがとう」と告げた。普段とは違う私の様子に驚いた様子で抱きしめてくれる大輔くん。

「どうした?何かあった?」

 

心配そうな声で、大輔くんは私の頭を撫でる。「何でもない」と言う私に「良かった」と優しく声をかけてくれた。きっと、大輔くん以上に素敵な人なんていないだろう。そう思えるくらい、私にとって大切な人だ。

 

「俺が友梨さんのこと、幸せにするからね」

 

私を抱きしめたまま、大輔くんは呟いてくれた。

 

 

迎えた結婚式当日。普段とは違う光景に戸惑う。式場の扉の前で父親と腕を組み、時間が流れるのを待つ。着慣れないドレスでみんなの前に出るのは恥ずかしくて仕方がなかった。

 

「友梨、似合ってるぞ」

 

私の緊張した気持ちを察してか、父親からかけられた言葉。その言葉に、式が始まる前にも関わらず涙が溢れそうになる。私は「ありがとう」と返すのが精一杯だった。

 

「続いて、新婦の入場です」

 

扉の向こうから聞こえる司会の声。扉の向こうで、大輔くんは待ってくれている。開く扉と同時に聞こえてくるのは、大勢からの拍手。会場には私が呼んだ人たちがたくさん来てくれていた。

 

家族や親戚。小学校の頃からの幼なじみ。中学校の恩師。高校生の頃の部活の仲間たち。大学でいつも一緒にいた友達。いつもお世話になっている会社の人たち。そして、その中に翔太の姿も見つけた。久しぶりに会う翔太。きっちりとしたスーツ姿は、翔太にとても似合っていた。

だけど、私が見ているのは翔太じゃない。会場の1番前で恥ずかしそうに私を見つめる大輔くん。前で組まれた手が震えているのが、入り口から見てもわかる。