「向井です。明日はよろしくお願いします」
自分で見ても、可愛くないメッセージ。まるで取引先に送るかのごとく、硬いメール。すぐに既読が付き、返信が来た。
「初めまして、森田です!明日は緊張していますが、よろしくお願いします!」
丁寧だけど人懐っこい様子が垣間見えるメッセージ。私は頬が緩んだ。それから明日の待ち合わせの時間と場所を確認して、その日は眠りについた。
デート当日。仕事以外で歳下の男性と2人きりで会うのはきっと初めて。
緊張していた私は待ち合わせ時間よりも1時間ほど早い時間に着いてしまった。とりあえず近くのカフェで時間を潰し、10分前くらいで待ち合わせ場所に向かう。時間を確認しようと時計を見た途端、爽やかな服装で優しそうな雰囲気を持った男性に話しかけられた。
「向井さんですか?」
待ち合わせは名古屋駅。巨大モニター前で待っていると、爽やかな服装で優しそうな雰囲気をした男性が話しかけてきた。
「お待たせしました、森田です」
笑顔で手を差し出してくる森田さん。反射的にその手を握る。
「行きましょうか、デート」
告げられたときにはもう、私の腕を引っ張りながら歩き出していた。
外で手をつなぐのなんて、何年ぶりだろうか。懐かしい感覚に胸が高鳴る。人混みの中で手をつないで歩く私たちは、周りにはカップルに見えているだろうか。そんなことを思うと、本当に付き合っているみたいな感覚に襲われ、妙に恥ずかしくなった。
「森田さん、手…」
顔が熱くなるのがわかり、何も気にせず歩く森田さんの方を見つめて告げる。すると森田さんは慌てた様子で手を離した。
「あっ、ごめんなさい。俺歳が離れた妹がいるんで、手をつないで歩くのが癖になっちゃってて」
手をつながれたときは女慣れしている人だと思っていたのだが、実際はそんなことはなかった。