NOVEL

2番目の女 vol.6 〜既読にならない週末〜

 

「向井です。明日はよろしくお願いします」

 

自分で見ても、可愛くないメッセージ。まるで取引先に送るかのごとく、硬いメール。すぐに既読が付き、返信が来た。

 

「初めまして、森田です!明日は緊張していますが、よろしくお願いします!」

 

丁寧だけど人懐っこい様子が垣間見えるメッセージ。私は頬が緩んだ。それから明日の待ち合わせの時間と場所を確認して、その日は眠りについた。

 

 

デート当日。仕事以外で歳下の男性と2人きりで会うのはきっと初めて。

緊張していた私は待ち合わせ時間よりも1時間ほど早い時間に着いてしまった。とりあえず近くのカフェで時間を潰し、10分前くらいで待ち合わせ場所に向かう。時間を確認しようと時計を見た途端、爽やかな服装で優しそうな雰囲気を持った男性に話しかけられた。

 

「向井さんですか?」

 

待ち合わせは名古屋駅。巨大モニター前で待っていると、爽やかな服装で優しそうな雰囲気をした男性が話しかけてきた。

 

「お待たせしました、森田です」

 

笑顔で手を差し出してくる森田さん。反射的にその手を握る。

 

「行きましょうか、デート」

 

告げられたときにはもう、私の腕を引っ張りながら歩き出していた。

 

外で手をつなぐのなんて、何年ぶりだろうか。懐かしい感覚に胸が高鳴る。人混みの中で手をつないで歩く私たちは、周りにはカップルに見えているだろうか。そんなことを思うと、本当に付き合っているみたいな感覚に襲われ、妙に恥ずかしくなった。

 

「森田さん、手…」

 

顔が熱くなるのがわかり、何も気にせず歩く森田さんの方を見つめて告げる。すると森田さんは慌てた様子で手を離した。

 

「あっ、ごめんなさい。俺歳が離れた妹がいるんで、手をつないで歩くのが癖になっちゃってて」

 

手をつながれたときは女慣れしている人だと思っていたのだが、実際はそんなことはなかった。