NOVEL

2番目の女 vol.6 〜既読にならない週末〜

 

恋愛にも仕事にも一生懸命になれない自分にモヤモヤするようになり、仕事でミスをすることも増えていった。今日も私は見積書の日付を間違えるという些細なミスをして、上司に叱られてしまった。

ため息を吐きながら席に戻ると、私をモヤモヤさせる原因となる話をした張本人から、急に話しかけられた。

 

「私の兄の友達が婚活してるんですけど、向井さん会ってみませんか?」

 

きっと後輩なりの気遣いだろう。私の「仕事が恋人」だという回答に納得がいっていなかったのかもしれない。私の「恋愛」に対する背中を押すように、後輩は声をかけてくれたのだろう。

 

「どんな人なの?」

 

私の回答に、前向きに考えていることを察してくれたのだろう。後輩は嬉しそうに目をキラキラさせて、相手の男性のことを教えてくれた。

 

「名前は森田大輔さん。私は大ちゃんって呼んでるんですけど。歳は向井さんの2つ下になりますね。兄の小学校の同級生で、昔から良く家に遊びに来ていたんです。私も小さい頃から一緒に遊んでもらっていたんですけど、めちゃくちゃ優しい人ですよ。結構大手に勤めてるらしいですし」

 

後輩からのゴリ押しもあり、私は森田さんに会ってみることにした。もしかしたら、翔太のことが頭から離れなくて一歩を踏み出すことができないかもしれない。

だけど、私は期待していた。もう一回、私に恋愛のチャンスが訪れてくれることを。

 

 

「向井さんすみません!急にクライアントから連絡が来て、明日打ち合わせになっちゃいました…」

 

森田さんと会う日の前日の夜。後輩から連絡が来た。最初は3人で会う予定だったが、どうやら仕事でトラブルが起きたらしく、どうしても行けなくなってしまったらしい。

 

「これ、大ちゃんのLINEなのでここから連絡してください!」

 

メッセージと一緒に送られてきた連絡先。仕事以外で男性と連絡をするのは久しぶりだったから、妙に緊張した。