NOVEL

2番目の女 vol.5 〜既読にならない週末〜

 

黒澤さんからの交際を断った私は、結婚相談所を退会した。もう誰かと一緒になろうとするのは止めた。一生私は、一人で生きていくしかない。

 

黒澤さんと会ったのはたった2回。たったそれだけなのに、私の中で黒澤さんへの気持ちはだいぶ大きくなっていた。恋愛なんてもうしないって決めたのに、私は黒澤さんを忘れることができなくなってしまった。

 仕事をしていても、家でテレビを見ていても、思い出すのは黒澤さんのこと。あのとき、告白を受け入れていたら…。自分から断ったくせに、そんなことばかり考えていた。それと同時に芽生えたのは、翔太への怒り。

 

「何で翔太だけ、幸せになってるんだろ」

 

ひとりぼっちの部屋で呟いても、返事なんて返ってくるわけがない。私の虚しい独り言だけが部屋に響いた。

 

SNSを開くと、トップに出てきたのは翔太が家族旅行に行ったときの投稿。3人で笑い合ってる姿に羨ましさを感じつつ、憎しみが出てくる。奥さんや子供には、何の罪もないのに。

あんなに大好きだった翔太の笑顔が、今となっては憎しみの引き金になってしまう。それなら見なければ良いのに。そんなこととっくにわかっている。だけど、見ずにはいられないのだ。

 

 

あのとき、翔太を好きにならなければ。

あのとき、翔太の誘いに乗らなければ。

 あのとき、翔太から離れられていれば。

 

そんな「たられば」をいくら並べても意味がないのに、私は過去の後悔から逃れることなんてできなかった。

 

 

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