バーで人事部長との過去を聞き、現在は付き合っていないことを知る。偶然の出来事から彼女の家に行くことになり…。
はじめから読む:Second Woman vol.1~その後ろ姿にただ惹かれた、それだけの筈だった~
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「向こうに洗面所があるから着替えてきなさい」
そう渡されたのは男性もののジーンズだった。
まさか人事部長のではないよな?
その疑問がきっと表情から伝わったのだと思う。彼女は弁解した。
「それは兄のものよ。たまに出張でこっち来るからって勝手に置いていったの。だから気にせず着なさい」
これでは前回と逆だ。
どちらも偶然とはいえ着替える羽目になるとは。
兄のものだというジーンズはほぼぴったりで確かに人事部長のものではないとわかった。
部長は俺よりも少し背が低い。
戻ろうとするとリビングの電気が消えている。
うっすらと足元の間接照明だけ。あたたかい光がやけにムーディーだ。
彼女は先ほどまでの服を着替えてすっかり部屋着になっていた。
レースの上掛け、腕と同じようになめらかなのがわかる足元。つまり、かなり色っぽい。
「…辻本さん。やっぱり俺のことからかってますよね?」
「そう見えるならそれでもいいけど?」
なぜ挑発してくるのだろう。
「あと、呼ぶときは名字じゃなくて名前で」
「…加澄、さん」
完全に彼女の言いなりだ。
「俺、帰りますね」
どこか、第六感のようなところでこれはいけないと思った。うっすらと危険信号を感じているのがわかる。
「悪いけど加瀬くんの鞄はここにあるのよ。帰りたかったら取りにきて」
ソファに腰を下ろした加澄さんの横に俺の鞄は置かれていた。
何の罰ゲームだ、これは。
でも考えてみれば独身同士なのだから問題はないだろう。
なぜ悪い予感がするんだろうか。
鞄を手に取る瞬間に彼女の肌が目に入る。
すっと伸びた睫毛が目に入り、その頬、唇をやわらかいオレンジ色の照明が照らす。
これはいけない気がする。
でも…それ以上に理性を抑えることはできなかった。