NOVEL

【最終回】Second Woman vol.10~失ったものの分岐点~

三村と結婚式の準備に追われる中、休憩室で2年ぶりに加澄と再会する。

衝動的に唇を塞いでしまうがそれを人事部長に見られてしまい…。

 


前回:Second Woman vol.9~嫉妬が引き起こす絶望~

はじめから読む:Second Woman  vol.1~その後ろ姿にただ惹かれた、それだけの筈だった~

 

加澄さんと会ってわかってしまった。

俺はまだ彼女のことを忘れていない。自分でもあきれるほどだ。

三村は大事な存在だしそれは変わっていない。だからこそ結婚式を控えている今、加澄さんに会ってはいけなかったと思う。

人事部長はあの後、何も追及せず俺に帰るよう促した。

腕に抱いていた女の子はまだ幼かった。きっと関東に行ってから結婚し出産したのだろう。

きっとキスをしたところも見ていた筈だ。

それがどれくらいまずいのか、その時俺にはわかっていなかった。

 

 

 

俺の異動が知らされたのは一週間後だった。

 

 

まず直属の部長に呼ばれた。

「加瀬、お前最近何かまずいことしただろう?女性関係で」

あきれながら言う。この上司は俺の仕事ぶりを結構認めてくれているためか、残念そうに言った。

「加瀬はうちの部署の大事な人材だ。だが、今回の件は部長としてどうしようもできなかった」

異動の内示を別の部屋に呼ばれて伝えられた。

地方にある支所に異動だという。支所といっても下請けのような位置づけだ。

俺の目の前にいるのは今の部署の部長だけではない。人事部長、そしてハラスメント委員会のトップだ。

俺の異動理由は社内ハラスメントと不貞行為による降格とのことだった。

女性社員(加澄さんのことだ)に社内でセクハラをしたこと。更に不貞行為を働いていたことが告げられた。

先日のキスがセクハラになるのは理解できる。ただ、不貞行為に関しては心当たりがない。2年前に加澄さんと付き合っていたことがそれにあたるのか?

質問をしたところで答えは得られなかった。

「自分の行為なのだからわかるだろう。反省しなさい」

そう告げられ部屋を出ていくように促された。

 

部署に戻ると明らかに俺の噂をしていた雰囲気が残っていた。

仕事での失敗ならまだしも、セクハラなんて美味しい噂になるだろう。

三村は俺との婚約により別の会社に転職している。それがまだ救いだった。

席に座ろうとしたその瞬間、デスクの内線が鳴った。