軽く、ノックオンが聞こえる。
雄一郎は小さく舌打ちをして、「誰だ」と声をかけると、一呼吸おいてからか細く鼻にかかった甘い声が聞こえる。
「旦那…様、お風呂が沸きましたので…。」
雄一郎は、ソファーにゆったりと背を伸ばし「入ってこい」と声をかける。
ゆっくりと戸が開き、入ってきたのは淑やかな黒い使用人の正装をした、年若い夏目芽衣(なつめめい)だった。
去年から使用人として雇われた、芽衣はまだ22歳で陶器のように色が白く、くっきりとした目鼻立ちはアイドルにいそうな程の美少女だ。
「旦那様じゃないと言ってるだろ…」
「申し訳ありません…雄一郎…様。」
雄一郎は、柔らかく微笑み、手を差し伸べる。
「こっちにおいで…」
芽衣は、ゆっくりと足音を立てないように、雄一郎のもとへ歩みを進め、その広い胸に飛び込む。
両耳には、0.15Ctの小さめのピアスが輝いていた。
Next:3月16日更新予定
珠子のお輿入れ当日、唯一郎に見初められた純粋で幼い少女・芽衣は使用人として西園寺家にいた。幸福の絶頂にいる珠子の前に、若き刺客、夏目芽衣が立ちはだかる!