東京からやってきたイケメンハイスペ男子。
彼の手には彼女たちが狙う会社のヒエラルキートップに躍り出る「勝ち組」のチケットが握られている...!
前回「Lady. Bloody Mary」~女の嫉妬~ Vol.1
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かつて15世紀、イングランドには2人の女王がいた。
1人は英国のエリザベス1世、もう1人はスコットランド女王のメアリー・スチュアート。
たった1つの「女王の座」を手に入れるために、双方は暗躍し、暗殺・計略結婚、そして女王の座をエリザベス1世が手に入れ、メアリーはエリザベス暗殺を企てたとして逮捕され、斬首刑で命を散らした。
戦場でも先頭に立ち兵を率いた男勝りな姿、そして亡くなる直前の死に衣装の真っ赤なドレスから、現在では彼女の名を模したカクテルが時を超えて人々を酔わせている。
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「それが、このブラッディメアリーなんですねぇ」
「トマトベースだけど、結構強めのお酒ですね、酔っちゃいそう...」
「そこがいいんじゃない、大人のお酒、それにこの真っ赤な色を見てちょうだい。情熱の赤よ」
本社からの新たな大きな企画が立ち上がったことを記念したパーティが、高級バーを貸し切って、落ち着いた雰囲気で行われていた。
磨かれた美しいグラスに、流れるジャズ。そしてカクテルを振るシェーカーの音。
彼女たちが手にする3杯の真っ赤なカクテル、ブラッディメアリー。
起源は元スコットランド女王メアリーから名付けられたという。
面白げに目を輝かせながら、口にするのは
オペレーション部代表、安武聖奈
総務部代表、小竹紗夜
研究開発部代表、三宮リノ
の3名である。彼女たちは今回のプロジェクトに相応しいとされた選りすぐりの社員なのである。
それまでに”色々”とあったのは社内のもっぱらの噂ではあるが。
そして新たなプロジェクトメンバーで東京からやってきた坂間遼の存在もとても大きかった。
噂では東京生まれの裕福な家庭で育ち、文武両道で名門大学卒業後、ストレートでインターンシップから会社側の熱いアプローチを受け、入社したという。様々な部署を経て現在は企画開発部のエースである。
年齢は36歳、どうやら未婚。
そして顔面偏差値がとても高く女子社員の中では、切長の瞳を持つクールな面持ちな男性と取沙汰されミステリアスな雰囲気も合わせ持っていた。
その上、仕事もよくでき、男女共に分け隔てなく接してイケメンなのに人格者、まさにまるで漫画から飛び出してきたかのようなハイスペ男性であった。
CKNの受付嬢から、社長秘書まで全ての女子社員が彼に注目した。
東京生まれのハイスペ男子に彼女なし(多分)
未婚の婚活に憧れる者もそうでない者も、彼のお眼鏡に叶えば会社のヒエラルキーのトップに立てる。
その為には、例えばわざとこけたり、ハンカチを落として気を引いたりと少しでも坂間の気をどうしても引きたい肉食系の女性たち、声すら掛けられず遠くから見つめるだけの少し控えめな女性たち、彼へのアプローチは様々であった。
しかし、その中でも”選別”された数少ない女性たちがいた。それがプロジェクトメンバーとして名古屋支店から選ばれた仕事の実力がしっかり備わった女性たちだった。
それが各部署から選ばれた、先の3人だったのだ。
ただでさえ少人数のメンバーだったこともあり、女性はこの3名であった。
普段は部も違うし、関わり合いもない。しかし互いの”噂”は広がっていた。
20代ながら、その人たらしと容量の良さで皆から愛され仕事を覚えていった若手有望株の聖奈。
30代としては正に部を裏からまとめあげる仕事をさらりとこなし、人当たりも良く地味目な格好はしているが、実は美人であると噂される紗夜。
そして、今回の一番の注目株。お局ポジションで仕事はできるが人当たりが強く、今回の仕事と坂間の隣をゲットしたいのでは...と、こそこそと陰口を叩かれても、ふんと鼻で笑うような強気なリノ。
プロジェクトメンバーの顔合わせの会議が終わり、金曜日の夜ということもあり飲食を含めたパーティではバーが貸切となり、聖奈も紗夜も、そして舌なめずりするリノも、男性たちと挨拶がてらシャンパンを片手に談笑している坂間を横目で見つめている。
3人ともどのタイミングで彼と挨拶をするのか牽制をはじめていた。
しかし表側は、有能なキャリアウーマンらしく、聖奈は話しかけてきた若い男性社員と歓談し、紗夜は同僚たちとワインを傾けながら仕事について話している、リノは後輩を捕まえ、最近最高に映えたインスタ写真を自慢していた。
その時、坂間がひとりバーカウンターに向かい座った。